2023.03.20

東山動植物園 飼育員 近藤 裕治さんのSDGs

シャバーニの背中が語るもの

シリーズ:絶滅危惧種を考える

2023.03.20

  • #イケメンゴリラ
  • #シャバーニへの期待

10月20日は東山動植物園の人気者シャバーニの26歳の誕生日。東山へやってきて今年(2022年)で15年。立派なシルバーバック(成熟したオスゴリラは背中が銀色の毛に覆われる)に成長したシャバーニを通して、野生のゴリラの現状や動物園での飼育の意義について、東山動植物園 飼育員の近藤 裕治さんにうかがいました。

期待を背負ったシャバーニの来園

シャバーニは、1996年10月20日。オランダのアペンヒュール霊長類公園生まれ。
その年の12月にオーストラリアのタロンガ動物園(東山動植物園の姉妹園)へ「群れごと」移動して成長。2007年6月27日に繁殖目的で東山動物園へやってきました。
当時、東山には、国内最長寿のメスのオキ(かつてゴリラショーに出ていた有名な個体)の他に、オスのリッキー、メスのネネ、その間に生まれたアイ(メス)がいたんですが、リッキーがアイが産まれてすぐ、1週間ほどで亡くなってしまったんです。そこで、新しい「群れ」を作ってほしいという期待とともに、シャバーニは来園しました。来園当初は綱渡りをしたり、「やんちゃな男子」だったシャバーニも、今や群れのリーダーとして、また、イケメンゴリラとしても大変な人気者に成長しました。

ゴリラ繁殖の難しさ

以前、日本の動物園では、ゴリラはオスとメスのワンペアで飼育されることが多かったんですが、なかなか子どもが産まれなかったんです。このままでは日本の動物園からゴリラがいなくなるのでは…という時期もありました。海外の動物園での飼育情報や野生での暮らしがあきらかになるにつれて、ゴリラは「群れ」で飼育することが繁殖につながるということがわかってきました。ですから、東山で「群れ」をつくるシャバーニの繁殖への期待は大きかったんですね。シャバーニは、ネネとの間にキヨマサ、そしてアイとの間にアニーと2頭の子どもを設けています。これは東山にとってはもちろん、日本の動物園にとってもとても大きな出来事でした。

絶滅の危機からは脱していない

東山動植物園 飼育員 近藤 裕治さん

現在、日本の動物園でゴリラ(ニシゴリラ)を飼育しているのは、東山をはじめ、上野動物園、京都市動物園など6か所、20頭が飼育されています。群れでの飼育が繁殖に貢献しており、飼育環境の意識もずいぶん変わってきました。
ニシゴリラの野生での生活も観察研究がすすみ、樹上生活をしていることや、人間と同じように、「群れ」をつくりながらもプライベイトの空間を大切にしていることなどもわかってきました。そこで、野生の生活に近づけるように運動場にタワーを設置したり、個体同士の距離がおける空間を確保できるようにしたりしています。
しかし、繁殖が成功したといっても、日本の動物園からゴリラがいなくなる危機からはまだ脱してはいませんし、野生でも絶滅の危機に瀕しています。現地の習慣としての食肉のための密猟や、人間が森に入ることで彼らが、人由来の病気に感染する危険もなくなっていません。また、森林伐採や紛争に伴う焼き畑などで生息地が破壊されてもいます。中でも最近問題になっているのは、携帯電話やパソコンにつかわれるレアメタル採掘ですね。採掘のために彼らの生息地がますます脅かされ、絶滅の危機に拍車をかけています。

取材先

東山動植物園 飼育員 近藤 裕治さん

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「すぐわかるSDGs」では、SDGsの17の目標をイラスト付きで分かりやすく解説しています。気になるゴールを押すと、目標の解説を1分程度で読むことができます。この記事に登場したSDGsを見てみましょう。

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