2023.08.22

五十嵐製紙 伝統工芸士 五十嵐 匡美さんのSDGs

廃棄野菜からつくる文房具

  • #フードロス削減
  • #伝統工芸

廃棄される野菜や果物を和紙に漉き込んでつくられる「Food Paper」という和紙の文具ブランドをご存知でしょうか。フードロス問題だけでなく、伝統工芸の持続可能性といった側面からも注目を集めています。開発したのは、福井県にある越前和紙の老舗工房「五十嵐製紙」。伝統工芸士の五十嵐 匡美(いがらし まさみ)さんにお話をうかがいました。

きっかけは息子の夏休みの自由研究

2019年に福井県が主催するブランディング講座を受講したんですが、一緒に参加していたデザイナーの新山さんと成果発表会用にと開発したのが、フードペーパーでした。
講座の講師だった中川政七商店の会長に展示会に出品するよう勧められて、翌年にはもう商品化することになって驚いています。
和紙に野菜の皮などを漉き込むアイディアは、私の息子がきっかけです。夏休みの宿題で小学4年生から5年間、「身近な食べ物や植物から紙をつくる」というテーマに取り組んでいたんですね。最初は食べ物から紙を漉くということだけだったんですが、毎年少しずつステップアップさせて、作った紙を顕微鏡でのぞいたり、漉いた紙の強さや書き心地を実験したり。冷蔵庫の中のものはもちろん、主人のおつまみのピーナツの殻まで見るものすべて紙にしたりもしていました。息子も、自分のアイディアが形になってまさか全国ブランドになるとは思ってもいなかったと思います。

毎日廃棄される大量の野菜くずを使用

「Food Paper」に漉き込む野菜は、主に福井県内のカット野菜工場からいただいています。カット野菜は、工場から病院や学校用に配られるんですが、毎日大変な量の皮や野菜くずが出るんですね。あとは、近くのブドウ農園から虫の被害にあって廃棄するものや皮などをいただいて使っています。
いろいろな野菜を使わせていただいていますが、「オクラ」は思った以上にかわいらしい黄緑色になりました。黄色いつぶつぶが入ったりもして、独特の風合いがでました。逆に残念だったのが福井県の名産、カニ。出来上がりはとてもかわいいピンク色になりましたが、漉いている時ものすごい「異臭」がして、商品化はあきらめました(笑)。

越前和紙の伝統をつなぐ

「Food Paper」は野菜ゴミの削減だけでなく、越前和紙の生産そのものを助けてくれてもいます。和紙の原材料は、コウゾ、ミツマタ、ガンピなんですが、年々これら全ての収穫量が激減していて、入手困難になっているんです。野菜を加えて漉くことで、コウゾなどの割合を減らすことができます。原材料が枯渇しないよう今のうちに少しずつでも使う量を減らして、越前和紙を未来につなげていきたいと思っています。
実は息子は、自由研究で「将来的には本当に食べられる紙がつくりたい」と考えていたようです。そういうものがつくれれば、軽くてストックしやすいし、災害などの際に少しでも空腹を満たすことができて、それがおいしければなおいいよね、と言っています。

取材先

五十嵐製紙 伝統工芸士 五十嵐 匡美さん

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この取り組みのSDGsを知ろう

「すぐわかるSDGs」では、SDGsの17の目標をイラスト付きで分かりやすく解説しています。気になるゴールを押すと、目標の解説を1分程度で読むことができます。この記事に登場したSDGsを見てみましょう。

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