2024.02.09

大久手山本屋 5代目店主 青木 裕典さんのSDGs

目指せ!食のダイバーシティ

世界には、主義主張や宗教的な理由から食べられない食品がある人達が多く存在します。またその区分も実にさまざま。そんな「食の多様性」に対応しようと取り組んでいるのが、名古屋市大久手にある味噌煮込みうどんの老舗「大久手山本屋」。5代目の店主である 青木 裕典さんにお話をうかがいました。

「食」の体験は「文化」を知ってもらうこと

学生時代の留学やバックパッカーの経験を通じて、世界の食の多様性については知っていたつもりでした。店を継ぐ前には重機のバイヤーをしていたんですが、セリに参加している人の半分がムスリム(イスラム教徒)でした。ランチ時に、日本人には「唐揚げ」「焼き魚」「幕ノ内」などさまざまな選択肢があるのに、宗教上の理由から彼らはムスリム用に用意された「カレー」一択。気の毒に感じていました。また、名古屋を訪れるインバウンドの5%はムスリムなんだそうです。せっかく名古屋に来てくれたのに、メニュー選択の幅がなくては「おもてなし」にならないじゃないか、と。「食」を体験することは「文化」を知ってもらうことですよね。「同じテーブルで多様な人が一緒に食を楽しむ環境をつくりたい」と考えたのが、ハラール(イスラム教徒向け)やヴィーガン(菜食主義者)用のメニューに取り組もうと考えたきっかけです。

ハラール、ヴィーガン対応メニューへの取り組み

2018年12月、ハラール対応のメニューから着手。豚肉やアルコールを口にしてはいけないので、まずはすべてのメニューの材料の洗い出しから始めました。豚肉を鶏肉に変えたり、みりんを他のものにしたりと、材料の置き換えにそれほど苦労はしませんでしたが、むしろ昔からの厨房スタッフに「新たなお客様を呼ぶための取り組み」だと納得してもらうことのほうが大変だったかもしれません。ヴィーガンに関していうと、魚と肉、卵や牛乳、はちみつなどもダメという方が多いのですが、うちの場合、創業以来100年間、ほとんどの出汁をかつおぶしやムロアジなどでとってきましたから、その出汁を変えるっていうところが難しかったです。現在ヴィーガン向けには、しいたけなどのきのこや昆布で出汁をとっています。

食のダイバーシティを目指して

青木 裕典さん

対応を始めて今年で5年目。一日にムスリムなら30人、ヴィーガンの方も10人ほどは来店されます。せっかく日本に、特に名古屋に来てくれたんだから、名古屋のおいしいものを食べて帰ってもらいたいという思いが第一です。八丁味噌などに関しては問題なく受け入れていただいています。残す人はほとんどいないですね。これまでインバウンドは、「寿司」「天ぷら」「ラーメン」みたいなところがありましたけど、もっとニッチな「郷土食を食べたい」というニーズは確実に増えていると思います。
厳格な「ハラール」の認定をうけるのではなく、イスラム教徒のニーズを理解して的確なサービスを「できる範囲」で提供するというスタイルをとっています。
うちの店を目当てに来て下さる方が増え、最寄りの地下鉄の駅(吹上駅)の外国人客が増えたと聞きます。周りの和菓子、洋菓子、洋食、中華、さまざまな店にも声をかけて、興味のある店主を名古屋市内のモスクに案内することも。みなさんと連携して、食のダイバーシティを目指せたらいいですね。

取材先

大久手山本屋 5代目店主 青木 裕典さん

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この取り組みのSDGsを知ろう

「すぐわかるSDGs」では、SDGsの17の目標をイラスト付きで分かりやすく解説しています。気になるゴールを押すと、目標の解説を1分程度で読むことができます。この記事に登場したSDGsを見てみましょう。

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