2024.02.23

東山動植物園 飼育第二係 川島 ひかりさんのSDGs

コサンケイ

シリーズ:絶滅危惧種を考える

2024.02.23

毎月一回、東山動植物園で飼育している「絶滅危惧種」にスポットをあてるシリーズ。今月は、新しくオープンしたアジアの熱帯雨林エリアで展示されているコサンケイというキジの仲間をピックアップ。東山動植物園 飼育第二係 川島 ひかりさんにお話をうかがいました。

アジアの熱帯雨林エリアで注目

コサンケイはキジの仲間で、体長はオスで大体60センチくらい。オスは白いトサカをもっていて、青くて光沢のある羽がとても美しいです。一方メスはトサカがなくて、灰色がかった茶色っぽい羽をしています。オスメスともに、顔の皮膚が赤いことも特徴のひとつです。野生では、ベトナムのつる植物で覆われたような湿度の高い林に棲んでいます。高度はだいたい300mくらいまで。下草が茂っているジャングルのような場所で、植物の種や昆虫などを食べています。普段は地面の上で生活していることが多いんですが、夜になると木の枝に止まって眠ることが多いといわれています。
アジアの熱帯雨林エリアの新コサンケイ舎では、現地の植物を多く配置して、これまでよりも野生の生活に近い姿をご覧いただけます。こんな美しい鳥がいるんだということをぜひ知っていただきたいです。

ベトナム戦争の犠牲に…

実はコサンケイは2000年以降の目撃情報がなく、生息数はごくわずか、野生では絶滅しているかもしれないと言われています。ベトナム戦争中の除草剤の散布や、農業のための伐採によって、原生林がほとんど残っていない状況なんです。また、わずかに残っている原生林も断片化していて、繁殖を継続的に行うのが難しいことや、森林が乾燥してしまっていることなども、要因のひとつです。そのうえ、罠をしかけて鳥を狩猟するハンターもいて、コサンケイ以外の鳥を狙っていたとしても、無差別な罠が彼らの生息数減少に影響を与えていると考えられています。

世界中の動物園が協力して保護・飼育

川島 ひかりさん

世界では、ヨーロッパの動物園とベトナムの動物園が協力して、野生復帰にむけた個体の確保や増殖を行っています。日本の動物園で飼育されているコサンケイは血統登録されていて、動物園同士で個体の交換を行うなど、協力して繁殖に取り組んでいます。東山では、1977年の最初の来園から欠かさず現在まで飼育展示しています。園内での繁殖事例も多く、今年(2023年)の4月にも雛が3羽誕生しました。残念ながら1羽は生後1か月で亡くなってしまったんですが、残り2羽は順調に育っています。生まれた当初は母鳥の周りにいた雛たちも、離れて動き回ることが多くなって、動きも俊敏になってきました。飛ぶための羽も成長してきていて、母鳥と一緒に木に止まっている様子も見られるようになりました。
野生ではすでに絶滅したかもしれないコサンケイ。展示をみていただくときには、そのことを少しでも頭の片隅においていただけると。戦争で命の危険にさらされるのは、人間だけではありません。

施設名:名古屋市東山動植物園
所在地:〒464-0804 愛知県名古屋市千種区東山元町3-70
電話:052-782-2111
公式サイト:www.higashiyama.city.nagoya.jp
Youtubeチャンネル:www.youtube.com/user/HigashiyamaPark
開園時間:9:00~16:50(入園は16:30まで)
休園日:月曜日(祝日の場合は直後の平日)、12/29~1/1

取材先

東山動植物園 飼育第二係 川島 ひかりさん

facebook

この取り組みのSDGsを知ろう

「すぐわかるSDGs」では、SDGsの17の目標をイラスト付きで分かりやすく解説しています。気になるゴールを押すと、目標の解説を1分程度で読むことができます。この記事に登場したSDGsを見てみましょう。

Brother presents Music Earth

今、世界では温暖化、貧困、格差社会…様々な地球規模の課題があります。
これからの「地球」の為に、今、私たちにできる事は一体何なのでしょうか?

毎週月曜 19:30 -19:55
FM AICHIにて放送中