2024.03.08

株式会社ニッコー 執行役員・研究開発部長 滝本 幹夫さんのSDGs

世界初!食器から肥料を~老舗食器メーカーの挑戦~

2024.03.08

世界で初めて、捨てられる食器をリサイクルして植物を育てる肥料を作ったのは、創業115年の老舗食器メーカー、石川県にあるニッコー株式会社。その白いテーブルウエアは世界中のホテルやレストランで愛用されています。提案者であり、執行役員で研究開発部長の滝本幹夫さんに開発のきっかけやご苦労をうかがいました。

きっかけは家庭菜園

滝本 幹夫さん

陶磁器がこれからも100年間生きていくにはどうしたらいいんだろう、と新たな展開の模索はずっと頭の片隅にありました。「リンの肥料をいれなきゃ…」と家庭菜園をしていた時に、「もしかしたら、食器が肥料になるかも」と思いついたのがそもそものきっかけです。食器(ボーンチャイナ)の「ボーン」は牛の骨のこと。うちの食器には、牛の骨から作られたリン酸カルシウムが豊富に含まれているんです。「これは肥料になるぞ!」と。ところが、法律の壁が立ちはだかりました。当時「肥料取締法」というものがあり、肥料にするための素材が限定されていたんですが、その中に「器」はなかったんです。門前でシャットアウト!でした。しかし、客観的な「データ」を揃えておけば、いつかチャンスが来るかもしれないとアドバイスをいただき、石川県立大学と共同で研究を行うことにしました。食器からつくった肥料で植物が成長することや、安全性などの実験を重ね、データを集めていきました。

ボーンチャイナ+アース=ボナース

しばらくして、法律が整い、肥料としての登録がようやくかなうチャンスがやってきました。2022年2月。発想から4年経っていました。法律の改正がなかったら、この肥料は日の目を見ていなかったと思います。肥料の名前は「ボナース」。原料である「ボーンチャイナ」の「ボーン」と地球「アース」を組み合わせた造語です。
食器を細かく粉砕して粉状にした肥料なので、真っ白でにおいもなく、長期間保存しておいても変質しません。今までの肥料の概念とちょっと違いますね。一番の特徴は、水に溶けないことです。ボナースを土の中に混ぜると、植物の根が自然にそこからボナースを栄養として取り込みます。これまでの水にとける肥料のタイプは、いわゆる「点滴」をうつようなやり方ですが、ボナースはゆっくりと植物本来の栄養の取り込み方をするため、根が長くしっかり張ってくれます。

ボナースから生まれる「その先の循環」

廃棄される食器を使ってつくった肥料を、農家さんに使っていただき、そこで育った野菜をホテルやレストランで使っていただき、一般家庭の場合は我々の食器で食事をしてもらう、それらの食器が壊れたら回収して、我々がもう一度肥料にして、また農家さんにおいしい野菜をつくっていただく……。それをぐるぐる回せないかなということは、開発当初からずっと思い描いていました。回収という行為については、環境省、それらを肥料にするのは農水省、と法律の問題もありますが、今、その2つを相談しながら進めていこうとしています。

取材先

株式会社ニッコー 執行役員・研究開発部長 滝本 幹夫さん

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「すぐわかるSDGs」では、SDGsの17の目標をイラスト付きで分かりやすく解説しています。気になるゴールを押すと、目標の解説を1分程度で読むことができます。この記事に登場したSDGsを見てみましょう。

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