少子化や住民の高齢化で空き家が増え、過疎化が進んでいるのは、都市から離れた交通の不便な町や村ばかりではありません。愛知県岡崎市の松本町は、松應寺(しょうおうじ)という、徳川家康ゆかりのお寺を中心に開かれた門前町。悩みはやはり住民の減少による空洞化でした。しかし、6年前から始まったプロジェクトで町が活気をとりもどし、高齢化対策も進んでいるというんです。一体、どんな町おこしが行われているのか?「岡崎まち育てセンター・りた」の天野 裕さんにお話をうかがいました。
空き家対策の次は高齢者の暮らしの支援
当初たくさんあった空き家は、出店者も増えるなどして減ってきましたが、次のプロジェクトの目的は、高齢者対策。まずは会員制の弁当屋をオープンさせました。週に1回、夕方1時間に限って営業する会員制の弁当屋です。宅配するのではなく、「買いにきてもらう」ことがポイントです。地域には独居の方や老々世帯の方も多いので、会員になっていただくことで、安否確認になります。何の連絡もなく来なければ、様子を見に行ったり、何かあれば地域包括支援センターにつないだり、とサポートできます。時間が決まっていることで、同じ時間帯に店で会員同士会うことになりますから、おしゃべりの機会にもなるというわけです。会員制で時間も決まっていることで、弁当をつくる側の負担も食品ロスも少なくなります。他に、空き家を改装してお年寄りが気軽に集まれるサロンをつくって、1コインで参加できる講座や文化教室を開いたり、定期的に会食会を開いたりしています。
高齢者が生き生きと暮らせる町づくりの秘訣
高齢者対策を考える前、地域のお年寄りにヒアリングを行なったところ、みなさん街中にもかかわらず、買い物に不自由していることがわかってきたんです。昔は徒歩圏内にあった店が現在は600~700メートル離れた郊外へ移動してしまいました。健康な人なら何でもない距離も、お年寄りや健康を害している人には大きな問題です。ネットでの買い物も手続きが煩雑で難しいという方も多いです。会員制の弁当屋という発想はそこから生まれました。空き家を改装したサロンづくりも、リタイヤした方がDIYしてくださったり、みなさんが得意なものを持ち寄ったり…。もともと歴史がある地域ですし、コミュニティの絆が強い場所なのも強みでした。住民の力があって初めてできることですし、長続きする秘訣だと思います。
関係人口を増やしていきたい
一時は僕もこの松本町の空き家に住んでいましたが、今は引っ越しています。しかし町の祭りの「役」を引き受けるなど、地域と定期的につながりながら町づくりに参加しています。こうした、地域の中の人たちだけではなく、地域の「外」に住みながら地域のためにいろいろ活動をしてくれる人たちを、「関係人口」っていうんですが、これからは松本町の「関係人口」を増やしていきたいです。観光などで訪れるのは一過性のものですが、その町が好きになったり、知り合いがいたりすることで、定期的にその場所を訪れて、関わってくれる人たちが町を活性化します。そんな関係人口のおひとりが、「この町のために」と移動販売を始めてくれました。この町を好きだな、この町の方と交流して素敵だなと思っていただく「町のファン」が一人でも増えたらうれしいです。
「岡崎まち育てセンター・りた」事業企画マネージャー 天野 裕さん
この取り組みのSDGsを知ろう
「すぐわかるSDGs」では、SDGsの17の目標をイラスト付きで分かりやすく解説しています。気になるゴールを押すと、目標の解説を1分程度で読むことができます。この記事に登場したSDGsを見てみましょう。
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