2024.03.22

株式会社キラックス 商品開発部 嶋崎 太郎さんのSDGs

海洋生分解性プラスチック

2024.03.22

2022年4月からプラスチックに関する新しい法律「プラスチック資源循環促進法」が、施行されました。脱炭素化をすすめ、海洋汚染を食い止めるためにも、プラスチックの製造から廃棄までを適切に管理していこうという法制度です。
そんな中、昨年(2021年)日本で初めて、海の中の微生物によって分解される画期的なプラスチックが開発されました。この海洋生分解性プラスチックについて、株式会社キラックスの商品開発部 嶋崎 太郎さんに詳しくうかがいました。

海の中の微生物で分解されるプラスチック

バクテリアや菌などの微生物が分解することができるものを「生分解性」といいますが、「生分解性プラスチック」は、微生物によって最終的に、水と二酸化炭素に分解されて自然にかえることができるプラスチックです。「生分解性プラスチック」は山の中や土の中で使われるものはありましたが、海の中でこうした実用性のあるものはこれまでありませんでした。プラスチックにはもともと化学物質や重金属が付着しやすい特性があるんです。そうしたプラスチックごみを海の生き物が間違って食べてしまったり、またさらに砕かれて(マイクロプラスチック)ずっと漂いつづけ、魚に取り込まれるとそれを人間が食べることになったり。プラスチックによる海洋汚染は深刻な問題で、人間もふくめた食物連鎖の中で生態系にどんな影響を与えるのか、世界中の研究機関で調査研究されています。このまま放っておいてはいけないというのが開発のきっかけでした。

条件の厳しい海中での生分解

もともと弊社は食品の包装資材をプラスチックのフィルムなどで作っていることもあり、生分解性プラスチックの研究をすすめてきました。土の中で分解できるプラスチックは「愛・地球博(2005年)」をきっかけに研究開発し、製品化。会場の生ごみなどを入れる袋が、早いもので3日、遅くても10日で目に見えないくらいまで分解され、たい肥にされました。生分解性プラスチックが分解するには、温度と湿度が重要です。海中だと、水分は十分ですが温度が低いため、今までの生分解性の材料では分解できなかったり、分解できたとしてもとても時間がかかってしまったりするのが課題でした。また海中は微生物の量が非常に少ない。生分解性プラスチックを水と二酸化炭素に分解してくれる微生物も少ないんです。

株式会社キラックス

分解されるということは、「消費期限がある」ということ

今回開発した海洋生分解性プラスチックは、およそ1年かけて水と二酸化炭素に分解されます。名古屋港水族館で昨年(2021年)の12月から今年の4月10日まで開催された特別展で、実際の海洋環境で分解される実験水槽を公開展示しました。
現在、海岸清掃のイベントのごみ袋として利用していただいたり、スーパーで実用テストをかねて有料レジ袋として使っていただいたりしています。しかし、生分解性プラスチックはまだ万能ではありません。自然にもどる、ということは、「プラスチックの袋に消費期限(製品として使える期間)がある」ということ。そのため、大量生産や在庫をもっておくことが難しい。従来のプラスチック袋のようなイメージで扱っていると、レジ袋やごみ袋として使う前に分解してしまったり、ゴミを入れたときに弱くなっていて破れてしまったり…ということもあり得ます。どんなプラスチックでどんな特徴があるのか、多くの人に生分解性プラスチックを知ってもらい便利に使ってもらうことで、技術も向上しますし、手の届きやすい価格になって普及がすすむことを願っています。

取材先

株式会社キラックス 商品開発部 嶋崎 太郎さん

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「すぐわかるSDGs」では、SDGsの17の目標をイラスト付きで分かりやすく解説しています。気になるゴールを押すと、目標の解説を1分程度で読むことができます。この記事に登場したSDGsを見てみましょう。

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