


毎月一種、東山動植物園で飼育されている絶滅危惧種を紹介しています。今月は、ユキヒョウを取り上げます。白くふさふさの毛皮とまるでマフラーのような長~いしっぽ。優雅な姿にファンも多い動物です。しかし彼らの野生での暮らしには大きな危機が迫っていました。東山動植物園 飼育第一係 山部 桂子さんにお話をうかがいました。
ユキチとリアン

写真提供:名古屋市東山動植物園
東山では現在2頭のユキヒョウを飼育展示しています。オスが「ユキチ」で現在14歳。メスが「リアン」現在12歳です。ユキチはマイペースでおっとりした性格で、リアンは、自己主張がはっきりしていて、好奇心旺盛、物おじしない性格です。飼育下では寿命は20年前後といわれていますので、まだそんなにお年寄りというわけではないです。
一年中昼間は一緒に過ごすようにしています。たまに小競り合いはありますが、お互い毛づくろいしたり寄り添って寝たり、相性はいいのかなと思います。
寒い地域に住んでいる動物なので、灰褐色の長い体毛に密に覆われていますし、雪の上でもあたたかく滑らないよう、足の裏にも毛が生えています。体には、ヒョウやジャガーのように梅の花のような形の黒い斑紋があります。しっぽだけで大体1メートルくらいあって、太くてふさふさしています。いろんな声は出すんですが、部屋の中では「ニャー」とちょっと野太い猫みたいな声で鳴くことが多いですね。
長い間、謎に包まれていた生態

写真提供:名古屋市東山動植物園
野生では、主にヒマラヤや中央アジアのアルタイ山脈などの高山地帯、標高5000メートルを超えるような場所にも棲んでいます。バーラルやアイベックスといった羊やヤギの仲間の草食動物を主な獲物に、他にも小型のげっ歯類(うさぎ)や鳥などを獲っています。断崖絶壁で狩りをするので彼らの運動能力はかなり高くて、いきなり10メートル以上もジャンプして獲物をつかまえるといわれています。長くて太いしっぽは狩りの時バランスをとるために有効に働くようです。
18世紀から存在は知られていましたが、1970年代までは撮影された写真もなく、その生態は謎に包まれていたため、長い間「幻の動物」と言われてきました。
毛皮や漢方薬のために狙われる命

山部 桂子さん(写真提供:名古屋市東山動植物園)
かなりの高地で生息しているので生態調査が難しく、正確な生息数はわからないのですが、少なくて3000頭、多くて6000頭と研究者の意見もさまざまです。しかし、年々数が減っているのは確かなようです。美しい毛皮や漢方薬としての骨の採取を目的に密猟がおこなわれたり、地球温暖化で彼らの生息地が人に近づき、家畜を襲ったことの報復として人に殺されたり、といった原因があげられます。絶滅の危機から救うために、新しく保護地域をつくり、密猟を減らすために地域に住んでいる方の生活を支援するプロジェクトなども行われています。また、家畜が襲われないような囲いの強化や、襲われてしまったときの金銭的な補償をする動きもあるようです。
私たちが彼らの野生での姿を、じかに見ることはまずありませんが、知らないところで、今も彼らの暮らしが脅かされていて、ひょっとしたら、地球からこのまま姿を消してしまうかもしれません。東山動植物園のユキチとリアンの姿を通して、彼らに迫っている危機に思いをはせてみてほしいです。
施設名:名古屋市東山動植物園
所在地:〒464-0804 愛知県名古屋市千種区東山元町3-70
電話:052-782-2111
公式サイト:www.higashiyama.city.nagoya.jp
Youtubeチャンネル:www.youtube.com/user/HigashiyamaPark
開園時間:9:00~16:50(入園は16:30まで)
休園日:月曜日(祝日の場合は直後の平日)、12/29~1/1
東山動植物園 飼育第一係 山部 桂子さん


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