2011年3月11日に発生した東日本大震災。それは地震と津波による被害だけでなく、原子力発電所の事故という、世界でも類をみない複合災害を引き起こしました。
その教訓を未来に生かそうと始まったのが「福島ホープツーリズム」です。
一般社団法人まちづくりなみえ 事務局次長 菅野 孝明さんに活動の内容を詳しくうかがいました。
福島のありのままを「見て」「聴いて」「考えて」もらう旅

福島県浪江町の大平山霊園にて
「福島ホープツーリズム」は、福島県を学びの場として「ダーク」ではなく「ホープ」として未来にむけて提供していく、中高生や企業研修などに向けたプログラムとして2016年にスタートさせました。地震・津波・原子力災害という世界でも類をみない複合災害を経験した福島の「ありのままの姿(光も影も)」を「見て」、さまざまな分野で復興に向けて挑戦している人たちの話を「聴き」、自分ごととしてこれからの未来を「考えて」もらおうという、教育の要素が強いツアーです。
これから「考え続けたいテーマ」を見つけて宿題に

ツアーは、日程に応じて基本的にはオーダーメイドで組みますが、JR常磐線が全線開通したので、いわきから入っていただくコースが多いです。3年前にオープンした原子力災害伝承館を入口に、東京電力の方との直接の対話、あるいは、福島県で唯一の震災遺構である請戸小学校などを見たあと、新たな産業基盤として国が進めているロボットテストフィールドなどを訪れるといった、震災前の状況を感じながら、新たな施設を見て巡るというプログラムになっています。(モデルコースはホームページを参照)
町づくり、医療、水産業、農業など、さまざまな分野で新たな模索をしながら活躍している方たちとの対話も用意しています。ただ「見て、聴く」というだけでなく、「現地でともに考える」ことがプログラムの一番の特徴です。ツアーの最後にまとめのワークショップを開催し、情報や意見を交換。2日間、または3日間で見て、聴いたことをもとに、これからどんな課題と向き合っていったらいいか「考え続けたいテーマ」を見つけていただきます。
日本中の子どもたちに福島を訪れ、知ってもらいたい

菅野 孝明さん
学ぶ前の生徒たちに福島のイメージを聞くと、最初はやはり「原発」「放射能」「怖い」、といった言葉があがります。学んだあとは、震災から12年経っているのにその時から変わっていない風景を目の当たりにして、大きなショックを受ける生徒さんたちも多いですが、新たな挑戦をされている方の話を聴いて、「自分に何ができるんだろう」「情報発信ってなんだろう」、またメディアの在り方や風評被害についての意見が出たり、経済優先の発展について疑問を持ったりと、明らかに大きく変化しています。数日で何か結果を出す、ということではないと思っています。思いを持ち帰ってもらい、自分たちが普段生活している場で何ができるんだろうと、持続可能な社会を実現するために何ができるか考えてもらうことを大事にしています。
高校の学習指導要領に2022年度から「探究学習」が盛りこまれるようになりました。福島は「探究の場」として絶好のフィールド。この社会をゆるやかにでも変革していくためにも、ぜひ日本中の子どもたちに福島を訪れ、知ってもらいたいです。
一般社団法人まちづくりなみえ 事務局次長 菅野 孝明さん


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「すぐわかるSDGs」では、SDGsの17の目標をイラスト付きで分かりやすく解説しています。気になるゴールを押すと、目標の解説を1分程度で読むことができます。この記事に登場したSDGsを見てみましょう。

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