2024.07.16

名古屋市科学館 学芸員 毛利 勝廣さんのSDGs

光害(ひかりがい)って何?

2024.07.16

最近、夜空を見上げて星をながめてますか?
そんなこと言っても、明るすぎて街の中じゃ星なんて見えない!という声も聞こえてきそうです。こうした「明るすぎる」環境、過剰な人工的な光がもたらす悪影響を「光害(ひかりがい)」というんだそうです。
この「光害」に長年取り組んできたのが、名古屋市科学館。学芸員(天文担当課長)の毛利 勝廣さんにお話をうかがいます。

過剰な「光」が「害」になる

毛利 勝廣さん

「光」はキレイな言葉なので、本当は「害」なんてつけたくないんです。しかし、まぶしくて見えづらい、夜が明るすぎていろいろ困る、そういったものを総称して20年ほど前から「光害」ととらえるようになりました。星にかかわることでは、夜明るいと空が見えにくくなります。私たちは明るいところに目の感度を合わせてしまうので、まぶしいものがあるとその横のものが見づらくなりますよね。街のコンビニやパチンコ屋さんの照明が明るすぎると、その前の道路を渡る人が見えづらくなるなどの不具合が生じます。
ここ数年、お店が照明を少し暗くしているのは、こうした「光害」をおさえているからです。また、昼夜の明るさのバランスが悪くなったりすることで、生態系への悪影響も問題になってきました。もちろん、我々人間も生きものとして、明るすぎる夜空に違和感を感じていたわけです。

名古屋市科学館がいち早く研究テーマに取り組む

提供:名古屋市科学館

なぜ街中で星が見えにくいのか?高度経済成長の時代は、街中の空気が汚いのが原因なのではと言われていました。名古屋市科学館では1980年代からいち早く光の観測をはじめました。まだ「光害」という言葉もなかったころです。すると、街の中では星と星との間の空が明るくなっていることが判明。つまり、街の明かりが上に漏れて空を明るく照らしてしまっていたのが主な原因だとわかりました。
対策としては、「下から照らし思わぬ方向に行っている光をやめましょう」ということだけでいいんです。夜、真っ暗になってしまったらそれはそれで危ないですから。上に漏れている光をやめれば、それが省エネにもつながるし、星もきれいにみえる。そういったことを90年代の初めくらいから名古屋市科学館が提唱し、当時の環境庁と「光害対策ガイドライン」を策定。街中ではこれくらいの光しか上に漏らしてはいけないといった基準をつくりました。1997年には、名古屋市科学館の周りに省エネで光の漏れが少ない光害対策のライトをメーカーと共同開発し、設置しました。

光害を知ってもらうことが大切

提供:名古屋市科学館

その後、開発した光害対策のライトは市販の商品になり普及しています。現在も科学館の周りはその明かりをきっちり展示しています。
名古屋市科学館の展示には、「市街光と星空」というコーナーがあり、街なかで星が見えにくい原因が夜空の明るさだということを、実験装置と調査データを使って紹介しています。ボタンをおすと、夜空の明るさと星の見え方の変化を体験していただけます。愛・地球博のときに作ったものをバージョンアップさせ、大切にしている展示です。夜も安全で、見やすく、省エネにもなって、必要なところだけうまく明かりを照らすということが広がっていけば、持続可能な社会になっていく…。そういうひとつの取り組みとして「光害対策」があるんです。多くの人が暮らし、エネルギーを使う都市にこそ必要ですので、知っておいてもらいたいですね。

取材先

名古屋市科学館 学芸員 毛利 勝廣さん

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この取り組みのSDGsを知ろう

「すぐわかるSDGs」では、SDGsの17の目標をイラスト付きで分かりやすく解説しています。気になるゴールを押すと、目標の解説を1分程度で読むことができます。この記事に登場したSDGsを見てみましょう。

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