2024.07.19

東山動植物園 飼育第ニ係 野村 勇治さんのSDGs

フクロテナガザル

シリーズ:絶滅危惧種を考える

2024.07.19

番組では月に一度、東山動植物園で飼育されている「絶滅危惧種」にスポットをあてて紹介しています。今月は「フクロテナガザル」。同園には「鳴き方がおっさんみたい」と人気のケイジ君がいますが、実は絶滅危惧種。絶滅に追いやられている理由や野生での生活などについて、東山動植物園 飼育第ニ係 野村 勇治さんにお話をうかがいました。

鳴き声が歌になるフクロテナガザル

写真提供:名古屋市東山動植物園

フクロテナガザルは、「テナガザル」の仲間の中でも最大で、体重は10キロ以上になります。名前の通り大きな喉袋(のどぶくろ)が特徴で、これをふくらませて大声で鳴きあいます。その声は2キロ先まで届くといわれています。
野生ではオスとメスのペアで暮らしているんですが、鳴き声を交わし合ってコミュニケーションをとっており、メロディーやパターンがある「歌」になっています。縄張り意識が非常に強い動物です。野生では、インドネシアのスマトラ島やマレー半島、タイの一部に生息。樹上生活を送っています。特徴的な長い腕を使って、枝から枝へ移動(ブラキエーション)していきます。基本的に日の出から日没まで、起きている時間の半分くらいは休息に使い、それ以外は家族間のコミュニケーションや採食行動、移動、鳴きあいなどをして過ごしています。

過去45年間で生息数が半分に?

野村 勇治さん (写真提供:名古屋市東山動植物園)

生息地が国をまたいでいることもあり、野生での具体的な生息数については詳しい調査が進んでいません。過去をふくめた3世代にわたって(2004年~2048年の45年 ※1世代が15年)個体数は少なくとも50%減少するのではないかという予測がされています。その原因は、人間の手による森林の伐採や採掘、道路の建設だったり、ペット取引や食用を目的にした狩猟などがあげられます。スマトラ島では、1985年~2007年の間に、火災・伐採・道路開発などによって生息地の40%以上が失われたといわれています。マレー半島も同様で、森林焼失がここ数年で加速しています。樹上性の霊長類のため、絶対的に森林に依存して暮らす彼らは、森林がなくては生きていかれません。現在は、現地の法律や国際法により、生息環境の保全が図られています。また、ワシントン条約によって商業目的の国際取引が禁止されています。

おっさんのような鳴き声で人気者のケイジ

写真提供:名古屋市東山動植物園

ケイジは1988年4月に東山にやってきました。推定36才。ペアだったメスのマツが2021年に亡くなり、一頭で暮らしています。朝、部屋の中から外に出た直後はよく鳴きますね。あとは、気になることがあったり、気になる人・集団が近づいてきたりすると、鳴くことがあります。鳴き声には感情がのっているので、落ち着いているときは落ち着いた鳴き声、怖さや怒りがあったりすると、その感情通りの鳴き声に聞こえます。休園日はお客さんもいないので、ゆったりしてほとんど鳴かないです。
現在、日本では12園館で約40頭のフクロテナガザルが飼育されています。国内の園館が協力しあって繁殖を目指しています。ケイジの鳴き声だけでなく、フクロテナガザルの置かれている現状などにも興味をもっていただけるとうれしいですね。

施設名:名古屋市東山動植物園
所在地:〒464-0804 愛知県名古屋市千種区東山元町3-70
電話:052-782-2111
公式サイト:www.higashiyama.city.nagoya.jp
Youtubeチャンネル:www.youtube.com/user/HigashiyamaPark
開園時間:9:00~16:50(入園は16:30まで)
休園日:月曜日(祝日の場合は直後の平日)、12/29~1/1

取材先

東山動植物園 飼育第ニ係 野村 勇治さん

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「すぐわかるSDGs」では、SDGsの17の目標をイラスト付きで分かりやすく解説しています。気になるゴールを押すと、目標の解説を1分程度で読むことができます。この記事に登場したSDGsを見てみましょう。

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