2024.08.27

東山動植物園 飼育第ニ係 茂野 寛生さんのSDGs

パンケーキリクガメ

シリーズ:絶滅危惧種を考える

2024.08.27

番組では月に一度、東山動植物園で飼育されている「絶滅危惧種」にスポットをあてて紹介しています。
今月は、自然動物館で飼育展示している「パンケーキリクガメ」。東山動植物園 飼育第二係 茂野 寛生(しげの ひろみ)さんにお話をうかがいました。

カメなのに甲羅がやわらかいのは理由がある

写真提供:名古屋市東山動植物園

本来、甲羅がもりあがっているのがリクガメの特徴なんですが、パンケーキリクガメは甲羅が平たく、触るとふにゃふにゃとへこむくらいやわらかいです。甲羅の長さは15~16㎝、厚さは3.5~4.5㎝、体重は360~550gと、小型のカメです。
アフリカ大陸のケニアやタンザニア、ザンビアなどのサバンナの乾燥した岩場の隙間にすんでおり、こうした岩の裂け目にうまく入り込むために、平らで柔らかい形状になったといわれています。危険を感じると、本来カメは甲羅の中に手足と頭をひっこめて身を守るのですが、パンケーキリクガメは、岩の隙間に入って空気を吸い込むことで、甲羅を「ぷくっ」と膨らませ、鋭い爪でふんばって敵に襲われないように身を守ります。見た目がこんがり焼けたパンケーキに似ているだけでなく、パンケーキのように膨らむことからも、パンケーキリクガメという名前がつけられました。

バールやジャッキで生息地が破壊される

写真提供:名古屋市東山動植物園

ワシントン条約で国際取引が規制されていますが、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでは「絶滅寸前」とされています。一番の原因が、ペットにする用途で人間が乱獲したことが大きいと言われており、そのためにバールやジャッキを使って生息地を破壊したこと、開発や放牧などで生息地自体が減少していることなどがあげられます。
本園では、オスが4頭にメスが1頭の、全5頭のパンケーキリクガメを飼育しています。現在は、オス2頭をひとつのユニットの中で飼育し、この2頭を展示しています。名前は誰が名付けたのがわからないんですが(笑)、ホットケーキとショートケーキという名前がついています。他の3頭はバックヤードで飼育しています。

卵は1度に1個 ふ化には100~300日

茂野 寛生さん (写真提供:名古屋市東山動植物園)

パンケーキリクガメは1度の産卵で1個しか卵を産まないと言われていて、産卵数が少ないことも繁殖の難しさにつながっているのかなと思います。
カメのオス・メスは、ふ化するときの砂の温度で決まると言われています(温度が低いとオス、高いとメス、その中間だと両方の性別が出る)。野生であれば、日照時間や卵を産んだ場所が日陰か日向か、雨量などでも変わってきます。パンケーキリクガメに限ったことではありませんが、人工的にふ化させるには温度を人間がコントロールしなくてはなりません。またふ化には、パンケーキリクガメの場合、100日から300日必要だといわれています。本園では、2011年と2017年に繁殖の記録があります。まずは、他のリクガメとは特徴が異なるこういうリクガメがいるということを見にきて知っていただくことが、保護への一歩かなと思います。

施設名:名古屋市東山動植物園
所在地:〒464-0804 愛知県名古屋市千種区東山元町3-70
電話:052-782-2111
公式サイト:www.higashiyama.city.nagoya.jp
Youtubeチャンネル:www.youtube.com/user/HigashiyamaPark
開園時間:9:00~16:50(入園は16:30まで)
休園日:月曜日(祝日の場合は直後の平日)、12/29~1/1

取材先

東山動植物園 飼育第ニ係 茂野 寛生さん

facebook

この取り組みのSDGsを知ろう

「すぐわかるSDGs」では、SDGsの17の目標をイラスト付きで分かりやすく解説しています。気になるゴールを押すと、目標の解説を1分程度で読むことができます。この記事に登場したSDGsを見てみましょう。

Brother presents Music Earth

今、世界では温暖化、貧困、格差社会…様々な地球規模の課題があります。
これからの「地球」の為に、今、私たちにできる事は一体何なのでしょうか?

毎週月曜 19:30 -19:55
FM AICHIにて放送中