廃棄する食用の油で、空を飛ぶことができるんだそうです。廃棄する食用油から航空用の燃料をつくって、飛行機を飛ばす!ってことらしいんですが…。なんだか夢のような話ですよね。このプロジェクトの名前は「Fry to Fly Project」。
プロジェクトの代表で、日揮ホールディングス プログラムマネージャーの西村 勇毅(ゆうき)さんに詳しいお話をうかがいました。
エビフライを揚げた油で飛行機が飛べる?
廃棄される食用油「廃食用油(はいしょくようゆ)」から作られるのは、「持続可能な航空燃料」。英語で「Sustainable Aviation Fuel(サステナブル・アビエーション・フューエル)」略して、「SAF(サフ)」と呼ばれています。 SAFは、廃食用油だけでなく、植物性・動物性の油や廃プラスチック、木や草など、化石燃料以外の原料から作られる持続可能な航空燃料の総称になります。ライフサイクル全体でのCO2の排出量を大幅に削減することができるのが一番の特徴です。これまでの航空燃料は、化石燃料と言われる石油や原油ですが、これらは地下資源を掘り起こしてきてそれを地上で使うため、大気中のCO2が増加します。SAFはもともと地上にあるものを燃料にしていますので、CO2は排出しますが、それをまた植物などが吸収し、その植物などを原料に食用の油を作り、使ったあとは、その廃食用油を使って航空燃料をつくるというサイクルができるので、大気中のCO2の濃度は増加しません。
実は、大量に輸出されていた日本の廃食用油
SAFの国内での本格的導入をめざす「Fry to Fly Project」は昨年4月にスタートしました。実は、それまで廃食用油は海外にかなりの量(およそ12万トン)が輸出されていました。これは、機体の燃費にもよりますが、ざっくりいうと東京~ロンドンをおよそ1500回フライトできる燃料にあたります。海外でSAFを作るメーカーが日本から廃食用油を調達してSAFを作り、わざわざ日本のエアラインが輸入するという、非常にもったいない状況がありました。この輸出入だけでも非常に多くのCO2を排出するという無駄をしていたわけです。廃食用油をしっかり国内で資源循環させていこうというのが、プロジェクトの主旨です。
国内で初めてのSAF製造がスタート
2025年から海外(EU)では、「ジェット燃料の2%をSAFにすべし」というSAFの義務化がはじまります。そうなると、空港ではSAFを供給する必要がありますよね。供給できない国へは、航空会社は飛行機を飛ばせませんし、できない場合はわざわざ供給できる空港へ寄り道しないといけなくなります。日本は島国で、その影響をもろに受けるため、日本政府も2030年までに、空港で供給している燃料の10%をSAFにするという宣言を行っています。
プロジェクトを立ち上げたときには29の企業・自治体・団体に参加や賛同をいただき、1年少し経った現在(2024年9月放送時点)は、その数が147に増えています。来年からいよいよ、国産初のSAFの製造と供給がスタートする予定です。油を出す出さない、航空に関係あるなしに関わらず、油という身近なものを通して資源循環、脱炭素をしていこうという取り組みを展開しています。
また、市民の方たちにも広がっていくためには、実感していただくことが先決です。各地で廃食用油の回収イベントなどを実施して、この油がどうやって航空燃料になるのかを実写版のVRで体験していただいています。愛知県でも中部国際空港セントレアと東浦町が連携し、プロジェクトを広める活動を一緒に行っています。
※次週(9月30日放送回)、セントレアの方にお話をうかがいます。
Fry to Fly Project 代表・日揮ホールディングス プログラムマネージャー 西村 勇毅さん
この取り組みのSDGsを知ろう
「すぐわかるSDGs」では、SDGsの17の目標をイラスト付きで分かりやすく解説しています。気になるゴールを押すと、目標の解説を1分程度で読むことができます。この記事に登場したSDGsを見てみましょう。
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