番組では月に一度、東山動植物園で飼育されている「絶滅危惧種」にスポットをあてて紹介しています。今月は「ツシマヤマネコ」。
東山動植物園では、環境省と連携してツシマヤマネコの繁殖プロジェクトに参加しています。本来、非公開なんだそうですが、今年5月に生まれた5頭の子猫が「特別に」公開展示され、人気を集めています。
公開展示の意義や野生での現状などについて、東山動植物園 飼育第一グループ 加藤 俊紀さんにお話をうかがいました。
野生のツシマヤマネコは100頭前後
日本のヤマネコには、ツシマヤマネコとイリオモテヤマネコの2種がいます。どちらもベンガルヤマネコの亜種の一つであるアムールヤマネコに属していて、ツシマヤマネコは、長崎の対馬に棲む地方個体群になります。胴長、短足でしっぽが太く、耳が丸くて後ろに丸くて白い斑点があり、額に白く縦じま模様があるのが特徴です。森の中に棲み、エサを探しに田んぼや里山などにやってきて、ネズミや虫まで多様なものを食べて暮らしています。絶滅の危機に瀕した一番の大きな要因の一つは、生息地の開発。またイエネコとの競合や病気、交通事故、猟師がかける罠などに誤ってかかるといったことも原因です。2010年に行われた第5次生息数調査では、100頭前後と推定されています。それ以前と比較して、減少は止まったようだといわれていますが、今年から最新の調査(第6次)が始まっていますので、詳しい状況がまもなくわかってくると思います。
2024年に東山動植物園で5頭の赤ちゃんが誕生
昨年、東山動植物園にやってきた新しいオス「ベニースモ」とメスの「レイラ」との間に、5月9日、3頭の赤ちゃんが生まれ、かりお(オス)、つつ(メス)、あざも(メス)と名付けました。
レイラは3度目の出産です。過去に2度、さご、さすな(2021年誕生)、したる(2023年誕生)の3頭を出産しており、すべて帝王切開でしたが、今回は、悲願ともいえる経腟分娩(自然分娩)が叶いました。
また、過去に出産した3頭(さご、さすな、したる)の父親「勇希」と、昨年、新しく東山動植物園に来たメスの「りん」との間にも、5月24日に2頭の赤ちゃんが誕生。しゅうし(オス)、ひとえ(メス)と名付けました。りんは初産にもかかわらず、経腟分娩でおまけに安産でした。子育てもなかなか上手です。
正面の顔だけを見て子猫5頭を見分けるというのは、実は至難の業でして(笑)。耳の後ろの白い斑点の部分にアニマルカラー(動物専用の色素)を塗って色分けし、個体識別しています。
今回 5頭の子猫の「公開」に踏み切った理由
ツシマヤマネコは、ツシマヤマネコ野生順化ステーションを含む、国内の10施設で36頭が飼育されています。繊細なツシマヤマネコは繁殖が難しいと言われてきました。東山動植物園では2015年から取り組み、今回は7例目の出産になります。繁殖に関するノウハウが蓄積されてきたこと(大学の先生たちとの連携で発情のタイミングを探るなど)も、子宝に恵まれた理由のひとつだと考えています。
プロジェクトが始まったころは繁殖が第一の目的のため、飼育していても一般公開はしないという基本方針がありました。しかし「箱入り」にしてしまうと、神経質な動物を神経質なまま生育することになります。そこで、幼い時期に様々な経験をさせることで、何事にも対応できる柔軟な個体(性格)にするため、公開して、さまざまな刺激をお客様から与えてもらおうと考えています。飼育下繁殖のしやすい個体になり、今後の繁殖がスムーズになることを期待しています。
施設名:名古屋市東山動植物園
所在地:〒464-0804 愛知県名古屋市千種区東山元町3-70
電話:052-782-2111
公式サイト:www.higashiyama.city.nagoya.jp
Youtubeチャンネル:www.youtube.com/user/HigashiyamaPark
開園時間:9:00~16:50(入園は16:30まで)
休園日:月曜日(祝日の場合は直後の平日)、12/29~1/1
東山動植物園 飼育第一係 加藤 俊紀さん
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「すぐわかるSDGs」では、SDGsの17の目標をイラスト付きで分かりやすく解説しています。気になるゴールを押すと、目標の解説を1分程度で読むことができます。この記事に登場したSDGsを見てみましょう。
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