最近よく耳にする「ヘアドネーション」。寄付された髪の毛で医療用ウィッグを作り、病気やけが、またその治療などで髪に悩みを抱える子どもたちに無償で提供する活動です。人気女優やアナウンサーがこの活動に参加する様子がニュースなどでとりあげられ、「ヘアドネーション」という名前だけは聞いたことがある、という人も増えているとは思います。でも、まだその認知度は十分とはいえないようです。
2009年に日本で最初にヘアドネーションに取り組み、18歳以下の子どもたちに医療用ウィッグを無償提供しているJHD&C(ジャーダック)の代表理事 渡辺 貴一(わたなべ きいち)さんに詳しくうかがいました。
※ヘアドネーションの賛同店の情報、やり方などについてはホームページをご参照ください。
2024年度のウィッグ無償提供は上限に達したため、受付を終了しておりますが、ヘアドネーション(髪の寄付)は受付中です。
ひとつのウィッグが完成するまでには3年
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2007年に独立して店を持つことになったことが、ヘアドネーションを始めるきっかけでした。他店と違う特徴をということもありますが、美容師として長い間、髪の毛でごはんを食べてきましたので、「何か髪の毛に恩返しになるようなことがしたいな」と思っていたんです。
一人分のウィッグが整うまでには、平均で50人分以上の毛髪が必要です。完成品のウィッグの髪の長さが長ければ長いほど、使う量も増えていきますので、長いものだと100人分くらい必要なこともあります。ひとつ完成するまでには、3年くらいかかります。
例えば今日、JHD&Cに毛髪をお送りいただいたとします。それがある程度の量まとまると、トリートメント処理といって頭髪の質や長さを一定にする作業をします。そこまでで半年~1年以上、さらにそれを加工するのに半年~1年以上。そこからようやくウィッグをつくる工程に入ります。パートナー企業であるアデランスのタイの工場で、職人さんたちがトリートメント加工毛を丁寧に手植えして作っていくんです。
必ずシャンプー前に切ってもらうこと
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髪を寄付していただくには、最低でも31センチの長さが必要です。まず、美容院を決めて、ヘアドネーションをすることを伝えてください。JHD&Cの賛同サロンもありますが、行きつけのところであれば髪質を理解してくれているので、そこが一番よいと思います。
髪を切るときの大切なポイントは、必ずシャンプー前にカットすること。少しでも髪が湿っていると、雑菌が入ったりカビが生えたりしてウィッグの素材として使えなくなってしまうんです。切った髪の毛は、ゴムでしっかりまとめ、ビニール袋などにいれて自分で送ります。郵便局のレターパックは、追跡番号がついているのでオススメです。やり方についてはJHD&Cのホームページでも詳しく案内されているので参考にしてください。美容院に丸投げするのではなく、あくまでも自分で責任をもって送るのがヘアドネーションのルールです。
ヘアドネーションが必要ない世界が理想
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渡辺 貴一さん
切った自分の髪の毛を送るというのは、最初に取り組むボランティアとしてハードルが低く、みなさんから支持をいただき、広まってきたと感じています。誰かの役に立ちたいと髪の毛を伸ばしてくださり、送ってくださる。その思いはちゃんとレピシエント(ウィッグを希望する子ども)さんたちに届いていると思います。しかし、ヘアドネーションをボランティアの入り口としてそこで終わらずに、そのもう一歩先、向こう側にも思いをはせていただけたらうれしいです。どうしてヘアドネーションが必要とされているのか?病気やケガなどで頭髪に悩みを抱える子どもたちが、ウィッグをつけなければ「生きづらい」世の中なんだということです。本来なら、ウィッグがなくても差別されず、生きやすい世の中、ヘアドネーションなどが必要のない世の中が理想なんですよね。
JHD&C(ジャーダック)代表理事 渡辺 貴一さん
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この取り組みのSDGsを知ろう
「すぐわかるSDGs」では、SDGsの17の目標をイラスト付きで分かりやすく解説しています。気になるゴールを押すと、目標の解説を1分程度で読むことができます。この記事に登場したSDGsを見てみましょう。
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Brother presents Music Earth
今、世界では温暖化、貧困、格差社会…様々な地球規模の課題があります。
これからの「地球」の為に、今、私たちにできる事は一体何なのでしょうか?
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