スマトラトラ

日本国内では、東山動植物園を含め7つの園で20頭（2024年11月時点）のスマトラトラが飼育されています。東山動植物園には今年5歳になるオスの「アオ」とメスの「ダマイ」（10歳）がいます。
「アオ」は、仙台の八木山動物公園で生まれたんですが、母親がうまく育てられないということで、人の手で育てられました。そのために、どうも自分のことをトラだと思っていないところがあって(笑)、人が大好き。私たち担当はもちろんですが、来園者のことも気に入っているようで、あえて、来園者のそばでじっと人間観察をしていたり、私たちに「フフン、フフン」と（鼻を鳴らすような）挨拶をしてきたりします。本来はトラに対してしてほしい行動なので、うれしいような、頭が痛いような複雑な気持ちです。まだ5歳と若いですし、広くなった運動場を俊敏に動き回ってほしいのですが、運動神経があんまりよくなく、慎重に動いています。ちょっと怖いことがあると担当のところにきて「助けて」みたいなそぶりをしたこともあります(笑)。

「ダマイ」は横浜ズーラシア生まれの10歳。2016年3月に東山動植物園に来園、その後2021年に仙台の八木山に移動しましたが、今年7月に東山動植物園に帰ってきました。「これぞトラ！」という感じの子です。遊びが大好きで、ブイ（漁業用のウキ）を使ってよく遊びます。夕方、寝室へ入ってからもブイを咥えて走り回ったり、ブイを放り投げたりしてよく遊んでいるので、私たちは「一人運動会」と呼んでいます(笑)。「何事？」と思うくらい大きな音がするので、最初はびっくりしましたが、さすがに慣れました(笑)。運動場でこちらがダマイの様子を見ていて、視線が合うと「遊んで」「追いかけっこしよう」と誘ってくるようなそぶりを見せたりもします。
アジアの熱帯雨林エリアは、以前のトラ舎に比べて起伏に富んだ植栽の展示場になりました。「トラの運動場に入り込んだ？」と思わせる観察窓があって、目の前にトラが来ることもあります。トラに見下ろされたり、狙われたり、来場者のみなさんにトラを探す楽しみを提供しています。トラとのかくれんぼを楽しんでください。