2025.06.03

東山動植物園 飼育第一グループ 安藤 いぶきさんのSDGs

ニッポンツキノワグマ

シリーズ:絶滅危惧種を考える

2025.06.03

番組では月に一度、東山動植物園で飼育されている「絶滅危惧種」にスポットをあてて紹介しています。今月は、ニッポンツキノワグマ。ここ数年、家に侵入した、スーパーの倉庫に立てこもったなど、さまざまなニュースが流れてきますが、実は、絶滅危惧種なんです。
東山動植物園 飼育第一グループの安藤 いぶきさんにお話をうかがいました。

九州ではすでに絶滅 四国など一部の地域でも絶滅の危機

ニッポンツキノワグマは森林に棲み、体重は通常100キロ前後。胸の白い毛が三日月状になっているので「ツキノワ」の名がつきました。雑食性ですが、主に木の実や葉、芽などの植物を食べます。特に秋には、木に登って大量の木の実を採食します。この時、手元に手繰り寄せた枝が折り重なって鳥の巣のような「熊棚」がつくられることでも知られています。
種としてのツキノワグマは、IUCNのレッドリストでも絶滅危惧種のVUに指定されています。日本に住む亜種のニッポンツキノワグマの減少も深刻で、九州ではすでに絶滅しています。四国、中国、紀伊半島、下北半島地域の個体群は、環境省で絶滅の恐れのある個体群とされています。その原因は、生息地である自然林の伐採や、人工林化が進んでドングリなどの食物を供給する広葉樹林が失われてきたためです。
また、道路建設や市街地化により生活圏が小さく分断され、その減少にますます拍車がかかっています。近年では、仕方なく食物を求めて人里に下りてきてしまうクマも多く、さまざまな問題が起こっています。

動物園のニッポンツキノワグマは冬眠しない

現在、東山動植物園で飼育しているニッポンツキノワグマは、秋田県の大森山動物園生まれの「ルイ」(メス 12歳)です。活発で食欲旺盛、特に秋にはドングリを好んで食べます。
野生のニッポンツキノワグマは冬の間は冬眠しますが、動物園にいるニッポンツキノワグマは冬眠しません。部屋が暖かく十分な栄養があるので、冬眠する必要がないからです。ですが、ルイも冬に入る前にドングリなどをたくさん食べ、気温が下がってくると動作が鈍くなり、寝て過ごす時間が増えますね。気温が上がって動きが活発になってくる様子を見ると、「春が来たな」と感じます。

「どんぐりポスト」を通して動物や植物の保全を考える

安藤 いぶきさん

東山動植物園では、園内に落ちているどんぐりを拾い、クマ達の秋の食事としてポストに集める「どんぐりポスト」を秋に企画しています。身近にあるどんぐりが実際にクマの食べ物になるという体験を通して、野生動物について考えてもらおうというものです。どんぐりは、園内で拾い集めたものに限らせていただいていますが、これは、普段何気なく暮らしている我々が、実は自然に対し影響力を持っている事を知っていただきたいからです。我々人間の活動によって動植物を別の地域に移動してしまい、元の生態系にダメージを与えてしまう場合もあるんです。どんぐりを集めながら、身近な野生動物たちについて考えてもらえたらと思います。
クマが人里に下りて畑を荒らしたり、倉庫に立てこもったりと、クマの印象が悪くなるニュースをよく耳にするようになりました。これは人が自然とのバランスを崩していることが大きな原因だと知ってほしいです。

施設名:名古屋市東山動植物園
所在地:〒464-0804 愛知県名古屋市千種区東山元町3-70
電話:052-782-2111
公式サイト:www.higashiyama.city.nagoya.jp
Youtubeチャンネル:www.youtube.com/user/HigashiyamaPark
開園時間:9:00~16:50(入園は16:30まで)
休園日:月曜日(祝日の場合は直後の平日)、12/29~1/1

取材先

東山動植物園 飼育第一グループ 安藤 いぶきさん

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この取り組みのSDGsを知ろう

「すぐわかるSDGs」では、SDGsの17の目標をイラスト付きで分かりやすく解説しています。気になるゴールを押すと、目標の解説を1分程度で読むことができます。この記事に登場したSDGsを見てみましょう。

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