「尾州(びしゅう)ウール」ってご存じでしょうか。愛知県一宮市を中心にした「尾州」とよばれるエリアは、世界的な毛織物の一大産地なんです。ここでは質のよい毛織物はもちろん、再生ウールにも古くから取り組んでいるんだそうです。
一宮市役所 産業振興課の村瀬 隼人(はやた)さんにお話をうかがいました。
「尾州(BISHU)」は、世界三大毛織物産地のひとつ

一宮市を中心とする尾張西部地域から岐阜県西濃地域は「尾州」といい、もともとは綿織物が盛んな地域でした。しかし、明治24年の濃尾地震で壊滅的な打撃を受けたことをきっかけに、毛織物に転換していったという経緯があります。今日では周辺を流れる木曽川の恵みを活かして毛織物の一大産地となっています。
尾州産地はイタリアのビエラ、イギリスのハダースフィールドと並んで世界三大毛織物産地の一つとして、世界の一流ブランドからも高い評価を受けています。尾州ウールは、紡績・撚糸(ねんし)・織り・編み・染色整理といった生地づくりに必要な工程がすべて産地内で行われています。また、各工程が分業体制になっていることも尾州産地の特徴で、言うなれば尾州全体がひとつの大きな工房・工場というわけです。現在、国内の毛織物の生産量のおよそ60%を尾州が占め、全国一位になっています。
尾州には昔からウールをリサイクルする文化があった

村瀬 隼人さん
尾州にはリサイクルウールという言葉が生まれるもっと前から、羊毛再生の文化があります。使わなくなった衣類を集め、反毛(はんもう)することで再び繊維に戻し、生まれ変わらせるんです。反毛とは糸や生地をほぐし、わた状にした後に糸にひき直すことで、19世紀に「反毛機」が発明されました。
反毛されたわたは繊維が短いため、新しい繊維を絶妙な割合でブレンドすることで、強度があって風合いの良い糸を紡ぐことができます。ウールが70%、その他の繊維が30%の混紡素材がバランスよく、尾州産地では毛七(けしち)と呼んでいます。
最近では「無印良品」で扱う再生ウールが尾州産地で作られるなど、古くから伝わる羊毛再生により、新しい衣服へとよみがえっています。
国内の紡績メーカー、繊維企業などが一堂に

今年(2025年)3月5日と6日に、一宮市で尾州の魅力を発信するイベント「JAPAN YARN FAIR & THE BISHU ~糸と尾州の総合展~」を開催します。
国内の紡績メーカー、繊維関係企業・団体など、40社3団体1大学が一堂に会し、尾州産地のテキスタイルメーカーを中心とした企業に対して、機能性や意匠性に富んだ高付加価値の糸を提案する機会であり、今回で22回目になります。一般の方も参加することができるイベントで、全国規模としては国内唯一のテキスタイルコンテスト「ジャパン・テキスタイル・コンテスト」の優秀作品の展示や、将来のファッション業界を担う学生の感性と尾州の匠の技術とのコラボにより製作された「翔工房」の作品展などが開催されます。
ほかにも、繊維産業の活性化に取り組む「株式会社 糸編」のキュレーター 宮浦 晋也さんと、ファッションブランド「POSTELEGANT」のデザイナーで、大阪万博日本館の制服をデザインする中田 優也さんによるトークショーもあります。また過去最大規模となる「糸と布の市2025冬市」では、尾州産地の生地や製品を購入することができます。
※「JAPAN YARN FAIR & THE BISHU ~糸と尾州の総合展~」2025年の開催は終了しています。

この取り組みのSDGsを知ろう
「すぐわかるSDGs」では、SDGsの17の目標をイラスト付きで分かりやすく解説しています。気になるゴールを押すと、目標の解説を1分程度で読むことができます。この記事に登場したSDGsを見てみましょう。

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