2025.07.01

東山動植物園 飼育第二グループ 野村 勇治さんのSDGs

クロサイ

シリーズ:絶滅危惧種を考える

2025.07.01

番組では月に一度、東山動植物園で飼育されている「絶滅危惧種」にスポットをあてて紹介しています。
今月は、クロサイをピックアップ。東山動植物園で飼育しているクロサイは、現在国内の最高齢になるそうです。野生のクロサイの現状や保護の状況など、東山動植物園 飼育第二グループ 野村 勇治さんにお話をうかがいました。

とがった上唇と2本のツノが特徴

クロサイはアフリカに生息しているサイの仲間で、ツノが2本あります。以前、この番組でご紹介したインドサイは、ツノは1本です。身体もクロサイはインドサイに比べてスリムで、大きさは280~300cm、背の高さは140~160cm、体重はけっこう幅があるんですが350~1,350kgと言われています。
クロサイの上唇はとがっていて非常に器用に動かすことができます。これは木の枝や葉などをついばんで食べることに適しているんですね。四肢は太く短く、それぞれ3本の蹄(ひづめ)があります。
野生では、アンゴラやケニア、モザンビーク、ナミビア、南アフリカなどサハラ砂漠より南の熱帯林地帯を除くブッシュを住みかとしています。母子だけは次の子が生まれるまで一緒にいますが、基本的には単独生活です。

大規模な密猟で個体数は98%減少した

野村 勇治さん

漢方薬や装飾品に利用するためのサイのツノを目的とした密猟が、クロサイを絶滅の危機に追いやった主な原因です。20 世紀の大半を通じて、クロサイは世界で最も個体数の多いサイ種でした※1。しかし1960 年までに推定 10 万頭までに減り、そこからさらに 1995 年にかけて、大規模な密猟によって個体数が 98%も 減少した※2といわれています 現在は、対策の強化や法の整備等が行われ、密猟は減少していますが、これらの継続は必要です。現在の総個体数は比較的安定していて、1990年代半ばの最低値以来、大陸レベルでのクロサイの数は2倍以上に増加。2017年末には 5,495 頭 (Emslie 他 2019)、2018 年末には 5,630 頭 (Knight 2019) と推定されています。

1:20世紀初頭には85万頭が生息 出典:WWFジャパン(https://www.wwf.or.jp/)

2:一時は2400頭まで激減 出典:WWFジャパン(https://www.wwf.or.jp/)

国内最高齢のクロサイ「アイ」は人間なら85歳

現在(2023年末の数字)、日本ではオス9頭、メス12頭(11園館)のクロサイが飼育されており、東山動植物園では、クロサイのメス「アイ」を一頭で飼育しています。
アイは1986年9月10日広島の安佐動物園生まれの38才で、国内最高齢です。今のヒトの平均寿命から単純に換算すると、およそ85歳といったところです。1995年に東山動植物園に来園して、その翌年にオスの「ニル」を出産しています。ニルは、2015年に横浜のズーラシアへ移動しました。繁殖が期待されているんですが、今のところうれしいニュースは入ってきていません。
アイの飼育を担当して4年になります。クロサイは非常に耳がいいので、最初は隣のコビトカバ舎の扉の音にも敏感に反応していたんですが、いろいろ遊びを工夫するなどしてアイも僕も経験を重ねるうちに、ど~んと構えてくれるようになりました。ほめ言葉にならないかもしれませんが、ちょっとぼ~っとしたような(笑)穏やかな性格です。一頭での飼育なので、屋内屋外すべてのエリアを活用してアイが活動できるようにしています。1日のほとんどの時間を休息したり、座って寝ていたりしますが、その落ち着いて過ごす様子をのんびりじっくり観察していただけたらと思います。

施設名:名古屋市東山動植物園
所在地:〒464-0804 愛知県名古屋市千種区東山元町3-70
電話:052-782-2111
公式サイト:www.higashiyama.city.nagoya.jp
Youtubeチャンネル:www.youtube.com/user/HigashiyamaPark
開園時間:9:00~16:50(入園は16:30まで)
休園日:月曜日(祝日の場合は直後の平日)、12/29~1/1

取材先

東山動植物園 飼育第二グループ 野村 勇治さん

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この取り組みのSDGsを知ろう

「すぐわかるSDGs」では、SDGsの17の目標をイラスト付きで分かりやすく解説しています。気になるゴールを押すと、目標の解説を1分程度で読むことができます。この記事に登場したSDGsを見てみましょう。

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