2025.09.16

東山動植物園 飼育第二グループ 川島 ひかりさんのSDGs

オオホウカンチョウ

シリーズ:絶滅危惧種を考える

2025.09.16

番組では月に一度、東山動植物園で飼育されている「絶滅危惧種」にスポットをあてて紹介しています。
今月は、オオホウカンチョウ。現在、国内では東山動植物園でしか飼育していない貴重な鳥です。東山動植物園 飼育第二グループの川島 ひかりさんにお話をうかがいました。

頭のパーマをかけたような黒い羽根と黄色いくちばしが特徴

東山動植物園の北園でオス1羽、メス1羽を飼育展示しています。オオホウカンチョウはキジの仲間で、その中でもかなり大きい種類です。オスの体長は90㎝ほど、メスは一回り小さいです。オスは巻き毛のような冠羽※をもっていて、おなかの部分は白く、身体は黒色、くしばしに黄色いこぶがあるのが大きな特徴です。巻き毛はたたんだり立てたりできるようになっているんですが、見ていると、テンションがあがるときにふわっと立ち上がるようです。メスは身体の色が3パターンあります。ひとつは縞模様タイプ、2つ目は全体が茶褐色で尾が縞模様のタイプ、そして3つ目は冠羽と尾、首が黒くて翼が縞模様のタイプ。東山のメスは3つ目のタイプです。飼育下ではあまり走るところは見たことがないですが、たまに走ると、結構速いです。

一部の鳥の頭部、頸部などにみられる特徴的な長く伸びた羽根

東山動植物園では過去に4回繁殖に成功

現在飼育しているのは、2羽とも2007年に東山動植物園で繁殖した個体です。当園では過去に4回繁殖に成功していますが、現在のペアはまだ繁殖に成功していません。実は、数年前にひなが生まれたんですが、生後すぐに亡くなってしまいました。
オオホウカンチョウは基本的には一夫一婦制の種だと考えられています(野生で小さなグループをつくるとの文献もあり)。5月(放送時)はちょうど繁殖の時期にあたります。オスがメスのあとを追いかける「追尾」といった求愛行動も見られるかもしれません。またオオホウカンチョウは、オスも巣作りに参加するといわれています。当園では、干し草や落ち葉、木の小枝などを展示場に用意しているので、そういった巣材を巣箱に集めるといった行動も見られます。

食用や違法なペット目的での狩猟で減少

川島 ひかりさん

オオホウカンチョウは野生では、メキシコ東部から中央アメリカ、コロンビア西部、エクアドル北西部あたりの熱帯雨林に生息しています。林床部で果実や種子、昆虫などをエサにしていますが、ネズミなどの小動物を食べることもあります。単独、もしくはペア、あるいは小さな群れで生活しています。
生息数は、過去25年間で急激に減少したという報告があります。その原因のひとつに、狩猟による圧力が考えられています。食用やスポーツ、違法なペットとしての捕獲を目的としたものです。もうひとつは、生息地の消失と分断です。彼らの生息域である森林が、過去25年間で12%も減少してしまったことも大きいです。
オオホウカンチョウはキジの仲間の中では比較的寿命が長く、飼育下では24年生きたという報告があります。東山のペアは2羽とも18歳。彼らがいなくなったら国内ではもうオオホウカンチョウは見られなくなってしまいます。今後もぜひ繁殖を目指して取り組んでいきたいと思っています。

取材先

東山動植物園 飼育第二グループ 川島 ひかりさん

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この取り組みのSDGsを知ろう

「すぐわかるSDGs」では、SDGsの17の目標をイラスト付きで分かりやすく解説しています。気になるゴールを押すと、目標の解説を1分程度で読むことができます。この記事に登場したSDGsを見てみましょう。

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