2025.12.16

東山動植物園 飼育第一グループ 堀場 桃美さんのSDGs

マヌルネコ

シリーズ:絶滅危惧種を考える

2025.12.16

番組では月に一度、東山動植物園で飼育されている「絶滅危惧種」にスポットを当てて紹介しています。
今月は「マヌルネコ」。今年の5月、東山動植物園で3頭の赤ちゃんが生まれたことで注目され、8月6日からついにその3頭の公開が始まりました!
マヌルネコは今後絶滅が危惧される「準絶滅危惧種」に指定されています。マヌルネコの現状について東山動植物園 飼育第一グループの堀場 桃美(ほりば ももみ)さんにお話をうかがいました。

およそ600万年前から変わらぬ姿?

写真提供:名古屋市東山動植物園

マヌルというのはモンゴル語で「小さな野生ネコ」という意味。ネコ科の共通祖先からおよそ600万年前に分岐して、現在の姿になったといわれています。「世界最古のネコ」と呼ばれるのはそのためです。彼らが生息しているのは、モンゴルやチベットの高原、ヒマラヤ山脈など、寒暖差が非常に激しい地域です。そのため、モフモフの長い毛で寒さをしのいでいて、夏毛の時に比べて冬は2倍くらいモフモフ!(笑)と大きくなります。
他のネコ科の動物との身体の違いは、まず耳の位置。低いところについています。彼らの生息地には岩場が多いんですが、そこから耳を出さずに隠れて狩りができるように、そうなったといわれています。次に目です。他のネコ科の動物は明るいところに行くと、目が細長く瞳孔が収縮するんですが、マヌルネコは、丸いまま収縮します。そして、なんといっても一番特徴的なのは、カクカクした動きです。マヌルネコは、コマ送りのようなカクカクした動きで獲物に徐々に近づいてしとめます。

人間がなかなか近寄れない厳しい生息環境

堀場 桃美さん(写真提供:名古屋市東山動植物園)

マヌルネコは、現在IUCNレッドリストで「軽度懸念(Least Concern: LC)」に分類されています。これは以前の「準絶滅危惧」から引き上げられた評価ですが、彼らが生息しているところは人が入れないような厳しい環境が多いので、なかなか正確な生息数の把握や研究がすすんでいないというのが現状です。数が減っている理由としては、農業用地の拡大や、道路建設、鉱山開発、といった人間の活動が、マヌルネコの貴重な生息地を奪い、分断していることがあげられます。また、彼らが主食にしているナキウサギやジリスといった小型哺乳類の減少も大きな懸念材料になっています。さらに、彼らの美しい毛皮を狙った密猟や違法なペット取引も、直接的な個体数減少の要因といわれています。

5月に待望の赤ちゃんが3頭誕生

写真提供:名古屋市東山動植物園

現在、東山動植物園では生まれた3頭の赤ちゃんのほかに、大人のマヌルネコが3頭暮らしています。
年齢順にいくと、まずメスの「ハニー」13歳。ツンデレ(笑)な性格です。マヌルネコの寿命は10歳前後と言われているのでおばあちゃんなんですが、まだまだ元気です。そして、オスの「エル」6歳。好奇心旺盛な性格で、今回の赤ちゃんたちのお父さんです。お母さんは「ミーニャ」4歳です。慎重な性格で、美形(笑)だと思います。
マヌルネコの繁殖期は12月から3月。その間はエルとミーニャを終日同居させていましたが、出産後、子育てはメスだけでするので、今はミーニャと3頭の赤ちゃんが一緒に暮らしています。生後1か月までは母仔ともに産箱から出ることはほとんどありませんでしたが、1か月を過ぎると子どもたちはエサに興味を示すようになり、マウスをかじりだしたり、産箱の外にでてくるようになりました。生後2か月を目安にワクチンを打つ予定なので、その時に目視でオス・メスを確認することになっています。

放送後、3頭のマヌルネコはすべてオスと判明。10月13日に命名式が行われ、3頭の愛称は「ノブ・ヒデ・ヤス」に決定しました。

施設名:名古屋市東山動植物園
所在地:〒464-0804 愛知県名古屋市千種区東山元町3-70
電話:052-782-2111
公式サイト:www.higashiyama.city.nagoya.jp
Youtubeチャンネル:www.youtube.com/user/HigashiyamaPark
開園時間:9:00~16:50(入園は16:30まで)
休園日:月曜日(祝日の場合は直後の平日)、12/29~1/1

取材先

東山動植物園 飼育第一グループ 堀場 桃美さん

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この取り組みのSDGsを知ろう

「すぐわかるSDGs」では、SDGsの17の目標をイラスト付きで分かりやすく解説しています。気になるゴールを押すと、目標の解説を1分程度で読むことができます。この記事に登場したSDGsを見てみましょう。

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