今年(2025年)は、第二次世界大戦の終結から80年。戦争を知らない世代へその記憶をどのように伝えていくかは、大きな課題になっています。そんな手段のひとつが、戦争の遺構などをめぐる「ダークツーリズム」。
椙山女学園大学でダークツーリズムに取り組んでおられる、現代マネジメント学部准教授 水野 英雄先生と、同大学4年生で水野ゼミに所属する髙橋 華さん、山田 麗香さんのお二人にスタジオにお越しいただき、お話をうかがいました。
同じ過ちを繰り返さないために何をすべきかを学ぶ旅
水野先生の専門は、観光経済学。「現地現物」をモットーに観光資源を調査し、観光まちづくりに役立てる方法などを探っています。それには若者の視点が重要で、現在ゼミの学生たちと、愛知県内の戦争遺構を観光資源として活用する「ダークツーリズム」で教育旅行の訪問者を増やす取り組みを行っています。
「ダークツーリズム」とは、戦争や災害の遺構をめぐる観光のこと。第二次世界大戦という過去最大の戦争で数千万人が亡くなった記憶を継承するため、風化していく戦争遺構を観光資源として生かしていこうと、1990年代後半にイギリスで研究が始まり、2000年代に入り世界中に広がりました。楽しいだけではなく、その場所で起きた出来事や背景を理解することで、再び同じ過ちを繰り返さないために何をすべきかを深く考え、学ぶことを目的にしています。
風化する戦争遺構を意識して残すためにも
戦後、多くの戦争遺構は撤去され、今残っているものは撤去費用がなかったためにたまたま残されたものが多いそう。戦後80年が経過し、戦争遺構の風化や開発が進み維持が難しくなっていますが、戦争を知らない世代に伝えるためには、意識して残していかなくてはいけません。こうした遺構を「平和学習」として修学旅行や遠足などで訪問してもらい、さらにツアー化して多くの人が訪問することで収益を生み、維持管理していくことが大切だと水野先生は話します。
ゼミでは2022年に、アメリカ軍が最初に上陸した沖縄本島の読谷村で戦争遺構を活用したダークツーリズムの現地調査を行い、戦争遺構を観光の対象にすることへの複雑な遺族感情や、入場料収入のみでの収益化の難しさなどの課題を踏まえて、より訪問しやすい教育旅行(学校行事として行われる修学旅行など)に活用することを考えました。2023年にはより身近なところで戦争を「自分事」として捉えることが必要と考え、愛知県内の教育旅行を増やすためのダークツーリズムを提案し、愛知県主催の「観光まちづくりアワード」で奨励賞を受賞しました。そして2024年には知多半島、2025年には三河で戦争遺構の現地調査を行い、教育旅行のためのコースの提案を行っています。
戦争遺構を通して「平和のための術」を考えて
水野先生(中央)とゼミ生の髙橋さん(左)、山田さん(右)
ゼミ生の高橋 華さんは、戦争をテーマにしたドラマや映画などをきっかけにダークツーリズムに興味を持ち、山田 麗華さんは、戦争を学ぶには相当な覚悟がいると思っていたところ、3年生の時に実際に愛知県内のダークツーリズムを体験。想像以上に戦争を身近に感じ、「観光の一種としてもっと気軽に学ぶべき」だと4年生になってこのゼミを選んだそうです。
今回調査された場所の一つが、豊川海軍工廠平和公園。海軍のための機銃や弾丸を作っていたところで、東洋一の規模で数万人が働いていました。空襲をたびたび受け、豊川空襲では2,500人以上が亡くなっています。当時の建物や爆弾跡が今も残っています。
また、真珠湾攻撃の暗号「ニイタカヤマノボレ一」を送信した依佐美送信所記念館では、素敵な花や楽しいイベントが開かれている場所で、戦争に関わっていた施設があることに2人は驚いたそう。通信面から戦争との関わりはあまり見てこなかったので視野が広がったと言います。
高橋さんは、「戦争を経験したことがないのはいいことだが、戦争を知らないのはいいことではないと思う。自分たちの取り組みはダーク度が高すぎないことがメリットで、小中学生をターゲットに戦争についての認知度を高め、平和について考えてほしい」と話します。
山田さんは、「戦争は思っているより身近にあること。戦争の遺跡を見て悲しんだり悼んだりするだけでなく、答えのない『平和のための術』を考え続けてほしい。被害者意識だけでなく、色々な人の立場で考えるべき」と話します。
今回取り組んでいるダークツーリズムの概要は、9月25日~28日までAichi Sky Expoで開催される「ツーリズムEXPOジャパン2025愛知・中部北陸」の名鉄観光サービスのブースで発表されます。(イベントは終了しました)
椙山女学園大学 現代マネジメント学部准教授 水野 英雄先生、水野ゼミ 4年生 髙橋 華さん、山田 麗香さん
この取り組みのSDGsを知ろう
「すぐわかるSDGs」では、SDGsの17の目標をイラスト付きで分かりやすく解説しています。気になるゴールを押すと、目標の解説を1分程度で読むことができます。この記事に登場したSDGsを見てみましょう。
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