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環境負荷を抑えつつ、労働環境を改善

水と風の力で涼しい、新発想のエコなスポットクーラー

近年、世界的な気候変動による気温の上昇がさまざまな影響をもたらしています。
気候変動対策の国際的な枠組み「パリ協定」では、世界共通の目標としてCO2などの温室効果ガス排出量を減らすことが掲げられました。国内においては夏季の気温上昇によって、死の危険もある熱中症のリスクが増大。企業はCO2の排出削減と、暑さへの対応の両立が求められています。
ブラザーはこの課題と向き合い、水と風の力で涼しい省エネルギーなスポットクーラーを開発。グループ会社であるブラザー販売や、ブラザーエンタープライズより販売しています。

関連するSDGs

環境配慮製品の創出を目指すブラザーが取り組む、省エネ冷房技術

ブラザーは、2018年発表の「ブラザー環境ビジョン2050」において、CO2排出削減を重要課題に掲げていますが、そこには製品における貢献も含まれます。世界で排出されるCO2の大部分は、化石燃料を使った発電などによる「エネルギー起源CO2」が占めるため、省エネ効果の高い環境配慮製品を開発し、お客様のもとでのエネルギー使用量(消費電力量)を減らすことは、社会全体のCO2削減につながります。 社会でのエネルギー消費は、国内統計によれば 「企業・事業所」が最も多く、その内訳は「動力・照明用」の46%に次いで、「冷暖房用」が計約30%を占めます。地球温暖化が進む中、ブラザーではエネルギー消費の少ない空調が必要になると考え、新事業として、環境に配慮した冷房技術の開発に取り組みました。

※出典:経済産業省 エネルギー白書2023

水の気化熱現象に着目した「2段階冷却技術」

従来の冷房はヒートポンプ式が一般的で、コンプレッサー(圧縮機)によって冷媒となるガスを圧縮し、熱を放出することで涼しい風を作り出しています。冷却性能は高いものの、大きな電力が必要となることや、涼しい風と同時に多くの排気熱風 を生み出すという問題もありました。また、冷媒ガスに使われているフロン類のガスは温室効果が高く、世界で削減の対象になっています。ブラザーは、蒸発時に気化熱として周囲から多くの熱を吸収する「水」の冷却能力に着目。水の気化熱を使用した冷房としては「冷風扇」がありますが、十分な冷却能力が得られない問題がありました。そこで冷風扇と同じ”冷却エレメント”による「直接気化冷却」に”熱交換器”での「間接気化冷却」を組み合わせた独自の「2段階冷却技術」を開発しました。

環境に優しい「スポットクーラー」の開発

この技術を活用したのが、工場などの作業現場で使用される「スポットクーラー」でした。近年、世界の年平均気温が上昇する中、夏季には倉庫や工場などの作業現場で熱中症が多く発生しています。多くの従業員が集約して働くよう設計されたオフィスや事務所と異なり、倉庫や工場は広大な空間に対し作業者の密度が非常に低いため、全体を空調することはエネルギー効率の面から非常に難しいのです。そのような環境では、作業者にだけピンポイントで涼しい空気を送り込み、快適な作業空間を作り出せるスポットクーラーが活躍します。しかしスポットクーラーもヒートポンプ式が主流で、ブラザーの開発者が現場を回ってユーザーにヒアリングを行ったところ、涼しい風と同時に生まれる排気熱風や、風量の弱さに悩んでいるという声が聞かれました。
そこで、「2段階冷却技術」を用いてスポットクーラーを開発したところ、一般的なヒートポンプ式のスポットクーラーの約4分の1以下の消費電力で、排気熱風を生み出すことなく、涼しい風を作り出すことに成功しました。さらにパワフルな風量によって低い体感温度も実現しています。

広がるラインナップと、高い外部評価

こうして完成したスポットクーラーは、工場の製造ライン、物流ラインや公共交通機関の駅、イベント会場などの現場に導入され、環境の改善に役立っています。 また、フォークリフト作業者の熱中症対策を模索していたトヨタ自動車の声に応え、フォークリフト用のスポットクーラーも開発。ブラザーとトヨタ自動車が協力して試作や現場での試験を繰り返し行いました。さらに、よりコンパクトでフォークリフトだけでなく牽引車などにも使用可能な、産業車両用のモデルも開発しました。 一般財団法人省エネルギーセンターによる「省エネ大賞」の「製品・ビジネスモデル部門」においては、2021年にフォークリフト用が「省エネルギーセンター会長賞」を、2023年には産業車両用が「資源エネルギー庁長官賞」を受賞するなど、その環境性能が認められています。 ブラザーは、環境に配慮した技術を用いて、産業の改善と安全な職場環境の実現に貢献しながら、エネルギー消費量の節約によってCO2の排出を抑えることで、SDGsにも貢献しています。

SDGs POINT

SDGs目標8「働きがいも経済成長も」には、安全な職場環境の推進を図るターゲット(8.8)があります。またSDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」には、持続的な経済成長を目指す上で、“環境に配慮した技術により産業を改善する”ターゲット(9.4)があります。また、SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」は気候変動とその影響を軽減するための緊急対策を求めています。ブラザーは2段階冷却技術を搭載した省電力なスポットクーラーの、社会への導入拡大を通じ、夏季の現場作業における労働環境を改善するとともに、スポットクーラーが活躍する工場や物流現場の空調にかかるエネルギー消費量を大きく節約することでCO2削減を実現し、SDGsの達成に貢献します。

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