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省EPSから、脱EPSへ。

イノベーションが生んだサステナブルな緩衝材

工場で生産されたブラザー製品は、世界中のお客様のもとに届くまでに船や飛行機、トラックなど様々な手段で運ばれます。その物流工程の中で発生する振動や衝撃から製品を守るのが「梱包材」です。その梱包材のなかでも性能の鍵を握るのが「緩衝材」。段ボール箱の中で製品が動かないように固定しながら、落下などの衝撃を受けたときに、自ら変形することで衝撃を吸収し、製品をダメージから守ります。
ブラザーでは従来、省資源で性能の良い発泡スチロールを緩衝材に使用してきましたが、プラスチックごみによる海洋汚染や生態系への影響を減らすとともに、資源の持続可能な利用を目指して、紙を使った緩衝材を開発。置き換えを始めています。

関連するSDGs

発泡スチロールで環境への負荷を減らす試み

ブラザーでは、2050年を見据えた「環境ビジョン2050」の中で、資源循環の最大化により、資源の持続可能な利用と、廃棄物による環境負荷の最小化を目指しています。その対象となるもののひとつに、梱包材があります。
ブラザーでは梱包材のうち、外箱はリサイクルしやすく環境に優しい段ボールを使用する一方で、緩衝材については従来、お客様に製品を安全にお届けするため、緩衝性能に優れたプラスチック製の発泡スチロール(Expanded Polystyrene, EPS)を使用したうえで、その使用量をなるべく少なくする「省EPS」の取り組みを行ってきました。十分な強度を保ちつつ可能な限りダウンサイジングし、生産・廃棄されるプラスチックを削減する。その背景には、発泡スチロールが素材として非常に高い緩衝性能を持っているため、少ない資源量でも高い性能を実現できること、さらにそれが正しく回収・廃棄され処理されることで、環境への影響を減らせるという思いがありました。

プラスチックごみによる海洋汚染が加速させた、新しい緩衝材の開発

しかし世界では、適切に処理されなかったプラスチックごみにおける世界的な海洋汚染と、それがもたらす生態系への深刻な影響から「脱プラスチック」の機運が高まります。毎年約800万トンのプラスチックごみが海洋に流出しているという試算や、2050年には海洋中のプラスチックごみの重量が魚の重量を超えるという試算*もあり、そうした世界の現実を前に、ブラザーは「省EPS」から「脱EPS」へ、大きく方針を転換する必要性を痛感。より環境負荷が少なくEPSに替わることのできる、新しい緩衝材の開発を加速しました。

*: 出典:環境省 環境白書 令和元年度版

サステナブルな緩衝材のための、新たなシミュレーション技術

新しい緩衝材には、湿度に強くリサイクルしやすいPET(ポリエチレンテレフタレート)素材も検討されましたが、脱プラスチックのため古紙などを原料とするパルプモールドを選択。 ブラザーには当時、パルプモールド緩衝材の設計ノウハウがなかったため、梱包材メーカーに設計を依頼する一方で、さらなる省資源化によるCO2排出量の削減を目指し、製品と梱包を一体として自社設計することを決意。その設計を効率的に進めるため、衝撃によるパルプモールドの変形を正確にシミュレーションできる技術の開発に着手しました。 当時は確立された方法もなく、まず既存のパルプモールド緩衝材の観察・解析から開始。社内のノウハウを応用しながら試験を重ね、検証を続けました。そしてついに、実際のつぶれ具合をシミュレーションで再現することに成功。開始から1年ほどのスピード開発でした。

新たな技術が生んだイノベーション

ブラザーではこの独自のシミュレーション技術を活用し、パルプモールドで緩衝材を新設計。100回以上の分析を行い、より軽量でコンパクト、資源量の少ない形状を追求しました。その結果、初期の設計と比較して緩衝材重量を33%軽量化しCO2を削減。また緩衝材の小型化によってEPS使用時と比べ梱包する箱を7%小型化できた製品もありました。 こうしてできたブラザーの新しい緩衝材は、汎用性の高い形状で多くの製品への展開を進めやすいだけでなく、積み重ねてまとめることができるデザインにより、省スペースで保管・輸送効率の高いものになっています。 この緩衝材は国内外で高い評価を獲得し、公益社団法⼈ ⽇本包装技術協会が主催する「日本パッケージングコンテスト2024」において「テクニカル包装賞」を、そして世界包装機構が主催する「ワールドスター2025」において「ワールドスター賞2025」を受賞しました。 ブラザーはこの技術を活用し、さらに省資源な緩衝材を追求するとともに、製品への導入を拡大し、持続可能な社会につながるモノづくりに取り組んでいきます。

省EPSから、脱EPSへ。イノベーションが生んだサステナブルな緩衝材(動画内の数値は2025年5月時点のものです)

SDGs POINT

SDGs目標12「つくる責任つかう責任」には、持続可能な生産消費形態の確保を目指すなかで“廃棄物の発生を、予防、削減、再生利用や再利用により大幅に減らす”ターゲット(12.5)があります。パルプモールドを用いたサステナブルな緩衝材の利用は、家庭やオフィスの廃棄物を削減し、リサイクルを促進することで、持続可能な社会の広がりに貢献しています。

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