今年は、第二次世界大戦の終結から80年。戦争を知らない世代へその記憶をどのように伝えていくかは、大きな課題になっています。先週にひきつづき、名古屋市中区丸の内にある資料館「愛知・名古屋 戦争に関する資料館」の学芸員 岡村 裕成(ひろあき)さんにスタジオにお越しいただき、名古屋市内の身近な場所に今も残る、戦争のつめ痕についてうかがいました。
※Part1はこちらから
戦後80年平和を未来へ Part1 ~戦後80年平和シンポジウム~
軍需産業の集積地だった軍都・名古屋
名古屋陸軍造幣廠千種製造所跡(千種公園)
名古屋が初めて空襲をうけたのは、1944年の12月。今のナゴヤドーム(バンテリンドーム ナゴヤ)があるところに戦闘機をつくる工場があり、真っ先に狙われたんです。名古屋は、航空機産業の一大拠点になっており、軍需工場も多かったので、米軍の爆撃もそこから始まりました。
もともと明治時代から、名古屋城に「第三師団」という日本軍の司令部があったため、軍隊が使う道具や武器をつくる場所が近くにあったほうがいいということで、市内に軍需工場ができ、戦い方の変化とともに戦闘機をつくるようになったというわけです。
最も死者数が多かったといわれているのが、1945年の6月に熱田区を狙った空襲です。熱田区には軍需工場が集中していました。今も「愛知時計電機(株)」さんがありますが、精密加工技術に注目した海軍が、魚雷の発射管や航空機の部品をつくらせていたんです。
また、千種区の千種公園には陸軍の造幣廠(しょう)千種製造所があり、何度も空襲にあっています。今、公園内には、爆撃で穴があき、鉄骨がむき出しになった壁が展示され、犠牲になった方たちの慰霊碑が建てられています。当館では、当時千種製造所で働いていた方から、この時の空襲でけがをした爆弾の破片を寄贈していただき展示しています。
空襲のターゲットは軍需工場から市民へ
焼夷弾の模型
最近わかっている空襲の傾向は、まず「軍需工場」を狙い、それが次第に「市民」を狙うようになっていくということです。市街地を狙うようになって使われたのが家屋を焼く焼夷弾です。当館の建物はかろうじて戦禍を逃れましたが、資料館のある名古屋 丸の内は、焼夷弾で非常に激しく米軍に狙われたエリアです。市街地を狙った空襲は1945年の3月から本格化しました。教科書やドラマなどでよく描かれる東京大空襲(3月10日未明の爆撃で死者10万人を出したといわれる)の2日後に名古屋が狙われています。実は、この3月12日の空襲が足りなかったからと、この1週間後の19日にまた空襲にあっているんです。これはアメリカ軍の資料からわかったことです。その後も何度も名古屋は狙われ、攻撃はその後周辺の中小都市へとうつっていきました。
名古屋城周辺に残る戦争のつめ痕
名古屋市役所 偽装塗装の痕
1945年5月14日。この日の空襲で名古屋城が燃えました。それまで何度も市街地が狙われていて、金シャチを避難させる矢先だったともいわれています。周りに足場を組んで囲っており、そこに焼夷弾がぶつかってしまって非常に燃えやすくなっていたようです。市内が焼け野原になっていたこともあって、燃えている名古屋城がかなり遠くから見えたという証言もあります。
近くの名古屋市役所は、空襲から難を逃れました。建物が頑丈だったということもありますが、空から見えなくするために「壁を黒く塗って」見えにくくしていたそうなんです。表からは見えないんですが、市庁舎を入った裏側にその痕跡が残っています。
また、名古屋城の北側に並ぶ松の木。よく見ると黒い穴が点在しています。これは、ガソリンの代用燃料として松の脂をとっていた痕なんです。もちろん名古屋城自体にもつめ痕は残っています。石垣が焼けた黒い痕もありますし、名古屋城を東側から入っていくと、礎石があるんですが、これも空襲で焼けたものだといわれています。城内にある「カヤの木」、また近くの那古野神社のイチョウの木やシイノキなど、戦災にあっても奇跡的に助かったと伝わる歴史的な木もあります。名古屋 栄の現在の風景も、当時の焼け野原からスタートしたものです。こうした戦争のつめ痕を知って、自分たちが今、平和にこうやって生きていられることの背景に何があったのかを考えるきっかけにしていただければと思います。
施設名:愛知・名古屋 戦争に関する資料館
所在地:〒460-0002 愛知県名古屋市中区三の丸三丁目4番13号 愛知県庁大津橋分室1階
電話:052-957-3090
開園時間:10:00~16:00
休園日:月曜日・火曜日
入館料:無料
愛知・名古屋 戦争に関する資料館 学芸員 岡村 裕成さん
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