2022.7.21

命をつなぎ、命の尊さを伝える(1)

アヌラの出産を通して学ぶ動植物園の役割

東山動植物園のアジアゾウ「アヌラ」に、待望の第2仔が誕生しました。
同園の広報パートナーであるブラザーでは、獣医師でもある黒邉動物園長にインタビューを実施。アヌラの出産を取り巻く様々な思いについてうかがいました。

動物園の存在意義

東山動植物園 動物園長・獣医師 黒邉 雅美 様

動物園の社会的な役割は大きく4つあって、展示、それから教育・保全・研究などがあります。その中でも最近は、地球規模で気候変動が起きていたり、SDGsなどへの意識の高まりから、環境教育や種の保存といったものが、非常に重要だと言われる時代になってきています。東山動植物園においても、ただ見せるのではなくて繁殖ですとか、そういった命の大切さを伝えたいという思いがあります。
 命を繋いでいくということは、一つの動物園ではできないことですので、日本全体、それから世界全体でも、動物園が協力し合って、動物園生まれの動物を相互にうまく活用しながら命をつないでいく。そして、市民の方や来園者の方に見ていただく。自然の素晴らしさや大切さ、命の尊さとかそういったものを伝えられるのが、動物園の存在意義かなと思っています。

アヌラの1度目の出産を振り返って

アヌラとさくら

アヌラは第1仔であるさくらを2013年に出産しています。ゾウが生まれるのは、今でもすごく大変なことですが、当時、東山動植物園としては初めてでしたし、全国的にも自然に繁殖する例としてはまだ2例ぐらいしかなくて、不安しかなかったです。ですからアヌラがさくらを生んでくれて本当に嬉しかったし、日本の動物園の1つの勇気というか「自分のところでもうまくいくんじゃないか」というような励みになったのではないかと思っています。
 環境教育や絶滅の危惧の動物を守るなどの取り組みは、動物園としてはすごく大切なことですが、やはり赤ちゃんの存在とか出産のインパクトというのは、取り組みを超えて、動物自体が持つ力とか、希望とか、そういったものを与える存在だと、改めて感じました。

ゾージアムの整備(2013年)

ゾージアム

現在のゾージアムは、2013年の1月にさくらが誕生した後、9月から運用が始まりました。旧アジアゾウ舎の約5倍ぐらいの広さがあります。ゾウは元々群れで生活する動物で、オスとメスは分かれて生活していますが、旧舎では、群れで見せられなかったり、オスとメスが一緒に生活するなど、野生環境とは違った環境でした。新アジアゾウ舎の「ゾージアム」は、そういった野生環境に近い状態が実現できるように、ゾウにとって幸せになるような、そういった考えで作られた施設です。

アヌラの2度目の出産にかける思い

今回の出産では、さくらという娘と、新しく生まれてくる次の命が、どのように一緒に成長するか、またさくらはアヌラから色んなことを学ぶと思います。そのような学びというか、命の繋がり、そういったものが見ていただけるような動物園というのは、凄く大事ではないかと思っています。

「地球のいのちに出会う森」東山動植物園

東山動植物園は、市内でも有数の自然豊かな森の中に立地しています。そういった環境は、まさに「地球のいのちに出会う森」や「自然への架け橋」と呼ぶにふさわしい施設であり、名古屋の市民の方が誇れる、名古屋を代表する施設だと思っています。ぜひこの出産をきっかけにまたご来園いただき、命のつながりを感じていただければと思います。

施設名:名古屋市東山動植物園
所在地:〒464-0804 愛知県名古屋市千種区東山元町3-70
電話:052-782-2111
公式サイト:www.higashiyama.city.nagoya.jp
開園時間:9:00~16:50(入園は16:30まで)
休園日:月曜日(祝日の場合は直後の平日)、12/29~1/1



アヌラの出産を通して学ぶ動植物園の役割

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