「ブルーカーボン」という言葉を聞いたことがありますか?
森林などが吸収するCO2を「グリーンカーボン」と呼ぶのに対し、海藻など海の植物によって海中や海底に吸収、埋没されるCO2のことを「ブルーカーボン」と呼びます。こうした海中の藻などの役目の大切さに着目し、保全する取り組みがひろがっています。NPO法人SEA藻の理事長で、鈴木ダイビング 取締役の鈴木 勝海(かつみ)さんにスタジオにお越しいただき、お話をうかがいました。
海水温の上昇でガンガゼが1年中活動
NPO法人SEA藻は、大切な自然を後世の人たちに受け継ぐことで環境の振興を図り、また、豊かなまちづくりに寄与することを目的にしている団体です。主に三重県の海で「藻場」を守る活動を行っています。具体的には、海藻を食い尽くす「ガンガゼ」の駆除をしています。ガンガゼはウニの仲間で、従来のウニの3倍以上の海藻を食べるだけでなく、根付く場所まで根こそぎ食い尽くしてしまうのが問題になっています。本来は、冬場になるとガンガゼは活動できなくなっていたんですが、地球温暖化で水温が高くなったことにより1年中活動しているので、藻場が食い尽くされ、いわゆる「磯焼け」といわれる海の砂漠化がおこっています。海の砂漠化は三重県だけでなく、全国的に起こっている問題です。
ダイバーが駆除を行うほうが効率がよい
海藻は、海中のさまざまな生き物の隠れ家や産卵場所になりますし、水中の栄養を吸収して光合成をおこないます。「藻場」は、水の浄化や海中に酸素を供給する海中の生態系を支える重要な場所なんです。藻場の砂漠化は、一般的には1980年代から長崎あたりで確認されはじめ、三重県の南部では1990年代後半から始まったと言われています。そうした海の調査やガンガゼの駆除を依頼されることが多くなり、SEA藻の活動をはじめることになりました。
ウニ類は夜行性のため、昼間は岩影を好みます。そのため、船の上からや素潜りでの駆除は効率が悪く、漁業者だけでの的確な駆除は難しいんです。間引きをするだけでは根本的な根絶にならないので、ダイバーがスキューバ(潜水用の水中呼吸装置)を装着して、直接ガンガゼを見ながら駆除を行うのが一番効率がいいんですね。うちではダイビングスクールもやっていますので(ダイビングショップを創業して50年を超えた)、生徒さんたちも参加しやすいんじゃないかと。ダイビングのライセンスを持っている方で、活動に参加してみたいという方はぜひ。うちのプールで練習をして、安全を確保してから参加いただくようにしていますので、安心してご連絡ください。
「終わりがない」ガンガゼの駆除
活動をスタートしてまもなく10年になります。今年(2024)も6月から駆除を始めています。場所にもよりますが、成果はまずまずですね。砂漠化していた岩場にホンダワラ類などが付着して、また無くなって付着して…を繰り返すうちに、つるつるだった岩場にさまざまな海藻が育つようになるんです。ある程度の藻場の大きさが守られるようになると、ガンガゼが食べにくくなります。しかし、ガンガゼの駆除も最低3年はやりつづけないと効果が薄くなってしまいます。彼らも色んなところから流れ着いてきます。一旦、海藻が生えて放っておいた場所が、3年もしないうちにまた磯焼けしてしまったこともありました。
ガンガゼの駆除は「終わりがない」です。現在、三重県ではガンガゼの駆除がメインの活動ですが、地域によっては魚の食害(海藻が食べ尽くされ磯焼けが起きること)も起こり始めています。少しそこが気になっていますね。
※「NPO法人SEA藻」は、愛知県三河湾でも藻場の保護活動を行っています。
三重県の海とは異なる活動について、次週、プロジェクトリーダーの鈴木 望海さんにうかがいます。
NPO法人SEA藻 理事長・鈴木ダイビング 取締役 鈴木 勝海さん
この取り組みのSDGsを知ろう
「すぐわかるSDGs」では、SDGsの17の目標をイラスト付きで分かりやすく解説しています。気になるゴールを押すと、目標の解説を1分程度で読むことができます。この記事に登場したSDGsを見てみましょう。
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