2022.12.19

「金沢鮮魚」代表 金澤 竜司さんのSDGs

循環型調味料で目指す持続可能な漁業

  • #海の砂漠化
  • #持続可能な漁業を目指して

大小140もの島でなりたち、白く美しい砂浜は「日本一」の呼び声も高い、長崎県の五島列島。そんな美しい海でも今「海の砂漠化」が問題になっています。
「五島の醤(ひしお)」は、そんな「海の砂漠化」を予防し、健全な海の循環を取り戻そうと生まれた循環型調味料です。手掛けたのは、五島列島の鮮魚店「金沢鮮魚」。
代表の金澤竜司さんに、この調味料が生まれた背景と、目指す「持続可能な漁業」への取り組みについてうかがいました。

美しい海の中で起こっていた砂漠化

私が小さいころは、海の中や沿岸にたくさん海藻がはえていたんですよね。それがここ、10年、15年くらい前からほぼ生えなくなってきました。

「海の砂漠化」とは、磯焼けをおこし、海岸の海藻がなくなっていくことです。原因はいろいろ考えられますが、大きな要因は海水温が上がったことと、それに伴い海藻を食い荒らす魚やウニの活動が活発になったことです。ところが海藻を食べつくす魚やウニの仲間のガンガゼなどは、独特の臭みがあったり、毒があったりするので、値段が付かないし流通に乗らないんです。漁師たちもそうした魚がかかっても、そのまま海に戻してしまうので、結局彼らによってまた藻場が荒らされるという悪循環。自然にパワーがあったときは、それでも回復していたんですが、特にここ10年くらいは、加速度的に藻場は減っています。藻場は魚たちのゆりかご。藻場があることで小さな魚が隠れられたり、魚が産卵できるんです。藻場がなくなると、小さな魚が育たなくなってしまいます。そうするとそれを食べる魚がいなくなり、魚をとる漁師もいなくなる…とさらなる悪循環がつづくわけです。

「五島の醤」開発のきっかけ

磯焼けの原因になる魚たちを行政は「害魚」として駆除してはくれますが、それは海から陸にあげて、処分してしまうだけ。漁師たちにとって海の生き物は「宝」であり「資源」です。なんとか彼らを生かす道はないかと考えたのが、開発のきっかけです。

これまで、規格外や害魚として廃棄されていた魚を使ってしょうゆをつくることで、海の環境を改善し、価値がないと言われた魚に価値を見出して、漁師の収入安定にも貢献できればと考えました。魚醤は独特の臭みが味わいでもありますが、より食べやすくするために五島産のつばき酵母を使って発酵させています。研究開発には、5年かかりました。多くのシェフにもそのおいしさは太鼓判をもらっています。

人も海も喜ぶ環境をつくる

魚醤をつくる製造過程で10%から15%くらいは、搾りかすが出るんですが、それも捨てずに、地元でやっているすっぽんや養鶏のエサ、畑の肥料などに利用してもらっています。製造過程で一切の無駄な廃棄を出さない循環型調味料です。実際にすっぽんもエサ食いがよくなって健康になってる、って話を聴きました。

目指しているのは、人も海も喜ぶ環境をつくること。
鮮魚の配送には、発砲スチロールを使う、というのがこれまでの通例でした。しかし、その始末に困ることが多いんです。放置されたり廃棄された発砲スチロールが、海洋ゴミとなるのも問題だと考えていました。小さくなったプラスチックごみは魚が誤食してしまうこともあります。人間の手で汚したものは、人間の手で減らさないと。そこで、うちでは、今、ほぼ9割を耐水性のダンボールに切り替えました。

海は世界中でつながっています。五島列島で起きていることは、世界の海の問題でもあり、解決のヒントもまた世界と共有できるはずだと思っています。

取材先

「金沢鮮魚」代表 金澤 竜司さん

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この取り組みのSDGsを知ろう

「すぐわかるSDGs」では、SDGsの17の目標をイラスト付きで分かりやすく解説しています。気になるゴールを押すと、目標の解説を1分程度で読むことができます。この記事に登場したSDGsを見てみましょう。

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