2023.01.17

東山動植物園 飼育第二係 武田 梓さんのSDGs

森の人・オランウータン

シリーズ:絶滅危惧種を考える

  • #森の人 オラウータン
  • #東山生まれの人気姉妹

8月19日は「国際オランウータンの日」。名古屋の東山動植物園でも、現在、2頭のオランウータンが飼育されています。「オランウータン」は、マレー語で「森の人」という意味だそう。野生でのオランウータンの暮らしとはどのようなものなのか、非常に知性が高いといわれるオランウータンと接して感じることなどを、東山動植物園 飼育第二係の武田 梓さんに聴きました。

東山生まれの人気姉妹

東山動植物園では、二頭の姉妹のスマトラオランウータンを飼育しています。お姉さんのほうが、今、52歳の「ネオ」。東山で初めて生まれたスマトラオランウータンです。妹の「アキ」が、37歳。「ネオ」は、クールビューティ。賢くて、冷静に飼育員やその行動を観察しています。ペットボトルの蓋なども、自分の手でくるくると回して器用に開けてしまいます。「アキ」は、飼育員に育てられたということもあると思いますが、甘えん坊で天真爛漫な性格。水場の蛇口を押さえて水を飛ばして遊ぶなど、豪快です。実は、ネオもアキも私より年上なので、接するときも自然と敬語になってしまいます。特に「ネオ」さん(「さん」づけで呼んでます)は、たたずまいに威厳があるので(笑)

実際にしゃべるわけではないんですが(私はメスしか飼育経験はありませんが、ゴリラやチンパンジーと違ってほとんど声は出しません)よく会話してくれるのが、おもしろいですね。部屋にいるネオさんに「ちょっとあのダンボールとってくれる?」というと、ダンボールをとって器用にたたんで檻の間から渡してくれます。夏には、大きいバケツに水をためてその中に布をじゃぶじゃぶ浸し、さらにそれを絞って頭にかぶって涼をとったりもしています。先日、ものすごく暑かったんですが、飼育場の扉をあけて「ネオさん、外へ行くよ」と声をかけたら、しばらくじっと考えていまして。そのあと自分でさ~っと扉をしめてしまいました(笑)

野生でのオランウータンの暮らし

野生のオランウータンは、3種類いるといわれています。東山にいるスマトラオランウータンと、同じスマトラ島で最近発見されたタバヌリオランウータン、そして隣のボルネオ島にいるボルネオオランウータンです。
それぞれの島のジャングルに生息していますが、オランウータンの生活は基本的にすべて木の上です。昼間食べるのも木の上のフルーツですし、夜寝る時も、木の上で木の枝を折ってベッドをつくってその上で休みます。人生のほとんどを木の上で暮らしています。
そんな彼らの野生の生活により近づけるため、2023年にオープンする新オランウータン舎では、10mを超えるようなタワーを何本もたてる計画です。高いところでダイナミックに動くオランウータンを見ていただくことができたらいいなと思っています。

絶滅の危機に瀕しているオランウータン

東山動植物園 飼育第二係 武田 梓さん

スマトラオランウータンの野生での生息数は、今、およそ14000頭。オランウータン全体の歴史は、何百万年もありますが、今から1万年前には中国の南の方、マレー半島までふくめて全部で100万頭以上いたといわれています。人間の活動がどんどん広がり、彼らの棲む森も減ってしまったために、その数が激減しています。
一番の原因は棲み処となる森が減っていることです。先ほどお話したように、彼らは人生のほとんどを森の木の上で過ごします。それがなくなると、生きていけなくなってしまいます。森の減少の大きな理由の一つが、パームオイルのプランテーション。パームオイルは植物油やスナック菓子などの食品や、洗剤、化粧品などの製品に欠かせないものですが、このパームオイルの農園をつくるために森が破壊されているんです。私たちはパームオイルなしの生活をすることはできませんが、そのために彼らが生息する森が削られる可能性があるということを知ってもらうことも大切。新しいオランウータン舎では、そういった私たちの生活とのつながりも展示して、伝えていこうと考えています。

取材先

東山動植物園 飼育第二係 武田 梓さん

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「すぐわかるSDGs」では、SDGsの17の目標をイラスト付きで分かりやすく解説しています。気になるゴールを押すと、目標の解説を1分程度で読むことができます。この記事に登場したSDGsを見てみましょう。

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