2023.05.30

東山動植物園 飼育第一係 辻 信義さんのSDGs

アジアゾウ

シリーズ:絶滅危惧種を考える

2023.05.30

2022年は赤ちゃんラッシュだった東山動植物園。中でも大きな話題を呼んだのがアジアゾウの赤ちゃん「うらら」の誕生でした。9年ぶり2度目となるアジアゾウの出産には、大変意義のある挑戦が行われました。東山動植物園 飼育第一係の辻 信義(つじ のぶよし)さんにうかがいました。

2度目のゾウの出産で新たな挑戦

うららは、2022年6月26日、アヌラ(メス20歳)とコサラ(オス18歳)の間に生まれました。2013年誕生の第一仔さくら(9歳)の妹になります。
野生でゾウは年長のメスを中心とした「群れ」で生活しており、その中で出産や子育ても行われます。先輩のやり方を見て学んでいくんですね。そこで今回は、ぜひさくらに「出産」を学ばせたいと、アヌラの出産をできるだけ近くで見られるようにしようと考えました。
アジアゾウの妊娠期間は、21か月から23か月と非常に長いです。アヌラ自身は二度目の出産ということもあって、アヌラが産んで育てるということに関してはそれほど心配していませんでしたが、今回はお姉ちゃんのさくらが一緒にいるということで、さくらがどういう動きをとるのか、予想がつかなかったんですね。
実は、出産のタイミングでさくらを隣の部屋に移動させる準備をしていたんですが、今回出産の兆候が見られなかったので、さくらを分けないまま同じ部屋で出産ということになってしまいました。ですから、さくらがもしかしたら仔ゾウを傷つけてしまうんじゃないか、という恐れもありました。さすがに、何か見たことがないものが出てきたものですから、驚きはあったと思うんですけど、攻撃することはなかったので「これは大丈夫なんだな」と安心しました。ゾウの動物園での繁殖例は非常に少ないので、実際に第一仔のそばで出産させたという例は今回が初めてだと思います。

アヌラの子育て

提供:名古屋市東山動植物園

うららは、産まれたときは推定130キロほどありました。今日現在(取材時11月21日)で365キロあります。アジアゾウは1日1キロ増えると言われているんですが、うららは、それ以上のペースで成長しています。元気に外の運動場を走り回って、泥あびや水浴びをしています。母親のアヌラは余裕の子育てぶり。お姉ちゃんであるさくらを信頼しているようで、うららがさくらにべったりしている時間が長い感じがします。今後は、アヌラから出産と子育てを学んだ日本産まれのさくらが、次の世代を残してくれることも目標にしていきたいと考えています。

野生のアジアゾウに迫る危機

東山動植物園 飼育第一係 辻 信義さん(提供:名古屋市東山動植物園)

野生のアジアゾウは、インドから東南アジア地域の森林に生息しています。森を移動しながら、その中の木の葉や枝を中心に食べて暮らしています。群れは、年長のメスを中心とした大体20~30頭くらいのメスで構成。オスは子どものうちは一緒に生活していますが、成熟すると群れから離れていって若いオスだけのグループを作ったり、単独で暮らしたりしています。
現在アジアゾウ全体で推定4万~5万頭が生息しているといわれています。大きいゾウだと1日150キロから200キロくらい食べるんですね。それだけの量をまかなえるエリアが必要なんですが、近年の森林伐採や開拓によって森林が減少していることが、生息数を減らしている原因だと考えられます。こうした野生のゾウの暮らしや絶滅の危機に瀕していることなどを広く知ってもらう活動にも、力をいれていきたいです。

取材先

東山動植物園 飼育第一係 辻 信義さん

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「すぐわかるSDGs」では、SDGsの17の目標をイラスト付きで分かりやすく解説しています。気になるゴールを押すと、目標の解説を1分程度で読むことができます。この記事に登場したSDGsを見てみましょう。

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