2023.01.10

石塚硝子株式会社 新事業企画グループ
リーダー 両角 秀勝さんのSDGs

卵の殻をガラスの原料に

  • #卵殻がCO2削減に!?
  • #業界を跨いだイノベーション

今年(2022年)2月から、卵の殻をガラスの原料に使うという業界初の試みを始めたのは、愛知県岩倉市にある石塚硝子株式会社。創業203年を迎える老舗のガラスメーカー。昭和の食卓を飾った水玉や花、動物などの柄をあしらった「アデリア」シリーズは再び注目を集めています。卵の殻はこのアデリアシリーズにも使われているとか。新事業企画グループ リーダーの両角 秀勝さんにお話をうかがいました。

業界初の取り組み

ガラスの主な原料は、珪砂とソーダ灰(炭酸ナトリウム)、石灰石(炭酸カルシウム)とカレット(ガラス屑)です。今回石灰石の部分を卵の殻に置き換えたということです。日本では良質の石灰石もたくさんとれますし、鉱山もたくさんあるので、あえてそれを他のものに変えるという発想が、これまでなかったのだと思います。ガラスの原料としてどうなのかという実験を研究室で行いましたが、全く問題なし。それどころか石灰石よりもメリットも多いということもわかりました。廃棄物として経費をねん出して廃棄していた卵の殻が、有効利用されるのはもちろんですが、CO2の削減にもつながっています。これまでの石灰石の採掘、加工や輸送などにともなうCO2などから見積もって、卵殻を1トン石灰石に対して置き換えると、およそ600キロのCO2削減につながると考えています。

ホタテの殻から卵の殻へ

環境問題への取り組みをテーマに考えていたところ、青森でホタテの養殖にともなって大量のホタテの殻が廃棄されているということを知り、「ガラスの原料に使えないだろうか」と考えたのが、そもそものきっかけです。ホタテの殻は、ガラスの材料としては問題なく、きれいな製品ができたんですが、新たな課題が浮上しました。わざわざ青森から愛知県岩倉市の我々の工場へまで輸送していては、CO2の排出という点で環境への負荷が大きすぎるんですね。

もっと近くで自然由来の炭酸カルシウムはないかと探したところ、次に候補に挙がったのが、三重県鳥羽市のカキの殻。しかし、実験したところ、こちらは不純物が多くて断念することになってしまいました。意外にハードルが高いとあきらめかけていたところ、日本で卵の殻が年間25万トンも廃棄されているということを知ったんです。土壌改良などの形で一部有効利用はされているんですが、7~8割は廃棄物として処理されていると知り驚きました。そこで愛知県内の食品会社を探し、小牧市に本社のある三州食品株式会社へコンタクトをとったんです。

業界をまたぐことで生まれたイノベーション

お話を伺った両角さん

三州食品さんを訪問してお話をしたところ「卵殻をガラスの原料に使えるなんて思いもよらなかった」と驚かれましたが、先方でも卵殻の廃棄は大きな課題だったことを知りました。
「食品業界のことは食品業界で解決すること」がいつのまにかスタンダードになってしまっていたんですね。今回のように業界をまたぐことで生まれる技術革新、イノベーションの大切さを痛感しました。

卵の殻は三州食品さんの工場で非常にきれいに洗浄されているので使いやすいのですが、実は中についている卵殻膜を除去するのが結構手間なんです。今後、この膜を除去する装置や技術を確立すれば、より多くの卵の殻を効率的に利用できると考えています。
業界の垣根を越えた取り組みは、ますますこれから大切になっていくと感じています。

取材先

石塚硝子株式会社 新事業企画グループ
リーダー 両角 秀勝さん

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「すぐわかるSDGs」では、SDGsの17の目標をイラスト付きで分かりやすく解説しています。気になるゴールを押すと、目標の解説を1分程度で読むことができます。この記事に登場したSDGsを見てみましょう。

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