今年10月、愛知、名古屋で開催される第5回アジアパラ競技大会を前に、もっと「パラ競技を知りたい!」とさまざまなパラスポーツを取り上げています。今回ピックアップするのは「車いすバスケットボール」。車いすバスケットボールの元日本代表、三宅 克己(みやけ かつみ)さんに、2週にわたってその魅力をうかがいました。
戦争で負傷した兵士たちのスポーツとしてスタート
第二次世界大戦で多くの軍人たちが傷を負いました。脊髄の損傷などで下肢が麻痺した彼らが生きる希望を失いかけている中、あるイギリスの病院で車いすのままバスケットを始めたところ、それが広がり、1945年くらいからイギリスとアメリカで車いすバスケットが始まったといわれています。大きな国際大会が初めて開かれたのは1960年のローマのパラリンピックなので、歴史は古いですね。チーム編成は一般のバスケットボールと同じく、1チーム12人、コートには5人が出場します。コートの大きさやゴールリングの高さなども変わりません。胸から下がほとんど動かない、さらに片手がほとんど動かない、といった選手もいます。障がいの度合いによって各選手に「持ち点」と言われる点数が設定され、出場選手5人の合計が14点になるよう組み合わせるというルールがあり、障がいの重い、軽いに関わらず、一緒に出場できる工夫がされています。
車いすを使いこなしたプレイスタイルの数々
車いすは幅を取る分、すり抜けがしにくいのですが、それを逆手にとって、動きにくい障害の重い選手が車椅子で相手の選手を止め、その間に味方の障害が軽く動きやすい選手に点を取らせる「スクリーン(遮蔽物)プレイ」が重要な戦術になっています。また、車いすのままジャンプはできませんが、車いすの車輪(24~27インチまで使える)の片輪を持ち上げ、斜めの体勢で高さをかせいでボールをカットしたりディフェンスする「ティルティング」という難しい技があります。私も長くはできないのですが、その片輪のままでずっと走行し続けるスゴい選手もいるんです。こうした車いすを使うからこそのプレイスタイルは、車いすバスケの魅力のひとつですね。またボールを持ったまま車いすを3回こぐとトラベリングという反則になりますが、車いすバスケットボールにはダブルドリブル※がないため、2回こいで1回ドリブル、を繰り返せばずっとドリブルし続けられます。しかしトップ選手は、片手でドリブルしながら、同時にもう片方の手で器用に車いすをこぐ高度な技術を駆使してずっと動き回るんです。
バスケットボールでプレイヤーが一度ドリブルを終えてボールを持ったあと、再びドリブルをしてしまう反則のこと。
欧米では車いすバスケのファンも多い
三宅 克己さん(アテネパラリンピック 2004年当時)
また攻守が入れ替わるときに行われる「バックピック」という、車いすバスケならではの特徴的な戦術があります。体の大きな相手選手がゴール下でシュートを決めたとき、その選手が相手側のコートに戻れないように、車いす2台くらいで押さえちゃうんです。押さえた選手より先にコートに戻れば、5対4で数的に有利になるだけでなく、大きな選手がいなくなるので、攻めやすくなりますよね。そうやってめちゃめちゃうまい選手を止めて動けないようにして、ディフェンスやオフェンスできないようにする戦術はよく使われます。ですから各選手の障がいを理解し、その特性を生かすことは重要な作戦。まさに多様性や共生社会につながっているスポーツだと感じます。欧米には、ふつうに車いすバスケのファンがたくさんいて、ビールを飲みながら応援したり健常者も一緒に車いすバスケを楽しみます。みなさんすごく目が肥えていて、ゴールを決めた選手よりも、ゴールを補助するために相手をブロックした選手をヒーローとして賞賛することもあるんですよ。観戦の視点もたくさんあって面白いです。
※次週もひきつづき三宅さんに車いすバスケットボールの魅力についてうかがいます。
車いすバスケットボール 元日本代表 三宅 克己さん
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