2026.08.07

特定非営利活動法人 日本パラパワーリフティング連盟理事長・愛知学院大学健康科学部教授 石田 直章さんのSDGs

パラパワーリフティング (1/2)

2026.08.07

今年10月に名古屋で開催される第5回アジアパラ競技大会を前に、もっと「パラ競技を知りたい!」という思いから、さまざまなパラスポーツを取り上げています。今回は「パラパワーリフティング」。特定非営利活動法人 日本パラパワーリフティング連盟の理事長であり、愛知学院大学健康科学部教授の石田 直章(なおたか)さんにパラパワーリフティングのルールや魅力について、うかがいました。

鍛え上げられた上半身だけで、バーベルを持ち上げる

写真提供:日本パラパワーリフティング連盟

パラパワーリフティングは、簡単にいうと「下肢に障がいのある選手たちによる重量挙げの試合」です。下肢に何らかの障害があるという基本的な参加条件がありますので、使えるのは上半身だけ。やることはベンチプレスですね。健常者とも競い合うことができます。健常者のベンチプレスでは足を床につけられますが、パラパワーリフティングでは、足を台の上に伸ばした状態で試技を行います。どちらも試技開始後、いったん胸までバーを降ろしてから挙げるんですが、パラパワーリフティングは胸を反って高く上げる「ブリッジ」が作りにくい分、開始時にバーを胸まで降ろす距離が長くなるので難しいんです。膝から下の切断という選手も参加できます。脊髄損傷で下肢に麻痺があって全く動かないという選手もいます。腹筋が効いたり、お尻の筋肉がぐっと踏ん張れる選手もなかにはいます。全くそれもできないので大胸筋と肩と腕だけで持ち上げるという選手もいます。それでも強い選手は200kgくらいを挙げるんですよ。

一瞬にかける選手たちの集中力が見どころ

写真提供:日本パラパワーリフティング連盟

試技の流れとして、名前を呼ばれたら台へ移って準備し、バーベルをラックから外して持ってスタートの合図を待つまでを2分間で行わないと失格になります。義足の選手には十分な時間ですが、車いすの選手は大変です。主審から「スタート」の合図がかかると同時にバーベルを下に降ろし、胸に一旦つけます。この時の細かいルールがいっぱいあるんです。「傾いちゃいけない」「胸の上で弾んではいけない」「胸の上で沈んではいけない」……それらをクリアして「バーを一瞬、胸の上で止める」ことができれば、後は挙げるだけ。そのまま、ほぼ左右同時に持ち上げて、審判の「ラック」と同時にラックに戻すという、厳しいけれどシンプルなルールです。しかし、挙げられるかどうかというギリギリの重さで挑戦している中で、バーを傾けちゃいけない…などのルールは厳しく、そこらへんが難しいです。挙げるときも、ゆっくりでもいいから左右均等に上にむかって挙げていかないと。どちらかが途中で止まってもダメです。最後に肘を伸ばして、主審の合図まで「挙がったぞ!」と認定されないといけません。必要なのは力が半分、制御系の能力が半分です。時間にすると長い選手でもスタートから3秒くらいの間なんですが、この一瞬にかける集中力が、競技の魅力ですね。

世界記録は310kg!

石田 直章さん(写真提供:日本パラパワーリフティング連盟)

女子の強い選手でも160kg台は挙げます。男子だと世界記録は310kg。大型のオートバイよりも重く、一般的なグランドピアノくらいですね。僕は大学時代に陸上競技でやり投げをやっていました。そこでベンチプレスもやって、そこそこいけるなと思ってました。当時はパラパワーリフティングの連盟はなかったので、パラの選手も一般のベンチプレスの大会に出ていました。そこで「あれ?僕より強い選手がいる!」と。さらに世界に目を向けるともっと凄い選手がいる。「どうなってるんだ?」というのが、パラパワーリフティングとの出会いでした。興味がわいて2000年のシドニーのパラリンピックを見に行きました。女子も初めて正式種目になった大会でしたが、僕の考えている女子選手の強さとはレベルが違って(笑)びっくりしました。パラパワーリフティングは、実はアジア圏の選手が強いんです。なのでアジアパラ競技大会は世界最高峰の選手が集まる大会なんです。ぜひ10月の大会はみなさんに見てもらいたいですね。

※次週もひきつづき石田先生にパラパワーリフティングの魅力をうかがいます。

取材先

特定非営利活動法人 日本パラパワーリフティング連盟理事長・愛知学院大学健康科学部教授 石田 直章さん

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